<前略>
弊社は、数年前に複数社の**事業部門が合併して誕生した、**を専門とする統合事業会社です。
合併後の@年は、それまでの事業経緯や該当者の転勤の問題などがあり、製造部門の一極化を優先して進め、開発や設計部門の集中化は後回しにしてありました。本年度、やっと全ての技術部隊を収容できるスペースも確保でき、4月1日を持って新オフィスで一堂に会しての開発業務がスタート致しました。
そこで早速生じた問題が、CADの不統一の問題です。この問題は、統合化以降たびたび問題視されていたのですが、部品及びユニットの共有化や人員の有効活用(出身母体をまたいだ応援など)などで、そのデータ互換性やオペレーションの相違などが原因となり、たびたび支障が出ておりました。
そして多くの幹部達から、一拠点に集中する前にCADの一本化を図るべきだと言う声が上がり、2年前から専任のプロジェクトを組み、各母体毎の意見聴取や統合化方針案の策定を行わせて参りました。
しかしお恥ずかしいことに、それぞれ自分たちが使い慣れたCADがベストと譲らず、結局異なるCADを、それぞれ持ち寄る形で、一極化がスタート致しました。とは言え、このまま先々も様々な支障がある状態を続ける訳にも行かず、早急にCADの統合を図る必要があります。
そこで3DCAD導入活用では昔から定評のある先生に、弊社の状況をご覧頂き、最も合理的且つ効率の良い形でのCAD統合に、ご助力頂けないかという声が一部から上がり、お問い合わせをさせて頂いた次第です。
つきましては、誠にご無礼かとは存じますが、以下の質問にお答え頂けますと幸いです。
<後略>
まずご質問にお答えする前に一言。
確かに出身母体毎に異なるCADを用いており、装置や部品の共有化や人員の融通に支障が生じている問題は、充分に理解できますし、なるべく早く同一のCADに一本化することは必要だと思います。
さもなければ、物作り側の統合化効果は得られても、肝心な技術統合化による相乗効果を殆ど享受できないことになりかねません。
しかし闇雲にCADを統合しようとしても、既に経験されていると思いますが、それぞれ「自分たちがこれまで使ってきたCADが最も優れていて、それに統合すべき」と言うことになり、意見を集約できないと思います。これまで配下にいた設計者達に新しいCADを覚えさせるなどと言う“無駄”を管理者達は嫌がり、またその影響で低下する生産性は、直接自分への評価に結びついてくるため、おいそれとは妥協できない事柄と考えます。
よくお考え頂けると理解できると思いますが、CADなどは、設計者が頭の中に描いた設計案を具象化する道具にしかすぎません。極端な話、少々機能的に、操作性的に劣っているCADでも、設計者達にとっては、慣れてしまえば最も優れたCADになってしまいます。
CADが設計をするのではなく、設計者自身が、その頭の中に描いた設計案を、単に具象化する目的にCADは用いられます。ですから、設計者達が何も考えずにその意図を、滞ることなく具象化できさえすれば、彼らにとっては、そのCADは最高のCADと言うことになってしまうからです。
ですから、CAD機能の豊富さや、操作性の良さを指標として、いずれかのCADに統合するようなアプローチをしても、これまで異なるCADを用いてきた設計者達は、納得するわけがありません。
貴社におけるこれまでの失敗は、この部分にあると考えます。
さてそれでは、どのような価値基準でCADの統合化を図るかですが、私の考え方としては、施策策定当初では、CADの統合化は考えるべきではないと考えます。それよりも重要なのは、保有技術の統合化や共有化の取組みだと考えます。
貴社は、統合されたそれぞれの母体は、それぞれ長い歴史のある製造業です。恐らく膨大な固有技術や継承技術を保有していると思います。そしてそれらが具現化された形での図面が存在すると思います。
まずは、部品や装置、開発機種の統合も含め、これらの技術を体系・形式知化する技術統合計画を策定して、今後5年10年先を目指して貴社の技術が進むべき道を策定すべきだと考えます。当然技術だけにクローズしての作戦立案などは愚の骨頂で、貴社の経営戦略や営業戦略とも連動する形での、戦略策定が肝要です。
そうすると、自ずとどのCADに統合すべきかが、見いだされて来るはずです。
基本的な考え方は、上記を参照下さい。具体的なアクションとしては以下の流れになります。