CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

貴社でCAE技術者の評価が芳しくないのは、これまで自社の事業収益に貢献できる仕事をしてこなかったのではないか




■質問■

<前略>

私は、入社以来30年余りCAE関係の仕事を行ってきました。一応順送り的な意味もあり、CAE部門の責任者の役割を務めております。

これまで弊社におけるCAE部門の責任者は、開発部門上がりの方々が代々務めており、私が初めて生え抜きでこの役割を務めることになりました。このため、部下達からの期待には、大きい物を感じております。

と言うのも、これまで我々CAE技術者に対する社内他技術部門の扱いは、「時間的概念が無い!」「コスト意識がない!」「俺たちが期待する答えを、能書きを言わずに出して来ればよい」など、おまけ者扱いが一般的で、悔しい思いを常々してきた経緯があります。長年このような屈辱を味わってきた部下達が、私に大きな期待を抱くのも頷けることだと思います。

しかし責任者の立場に就いてから一年、我々CAE技術者に対する厳しい風当たりは、私が責任者になったことで、かえって悪化する始末で、ほとほと困り果てております。特に新年度の予算取りの会議では、「投資対効果を定量的に示せ」のブーイングの嵐を受け、当部から申請した、更新時期を迎えるWindows XP機の更新はもとより、一部ソフトのME&S費用さえもカットされる始末で、部下達の落胆には大きなものがあります。

かねてからCAE懇話会などで、他社出席者達に弊社のこのような状況をそれとなく伝えて、同じような問題はないか聞き出そうとするのですが、私のように社内の体たらくをしゃべってくれる方はおらず、他社ではどのようにしてこのような問題回避をしているのかが把握できません。精々「家の設計者はレベルが低くて・・・」などという設計者達への悪口に終わってしまうのが常でした。

そこで多くの製造業で指導をなされておられる先生に、お聞きしたいのですが、他社ではCAE技術者又は部門への評価は、どのように行われて、いかなる評価を受けているのでしょうか。また我々としては十分に仕事をこなし、評価されるべき成果を、これまで残し続けてきたと自負しているのにも拘わらず、弊社のような悪評価をCAE部門に下されるのか、ご経験的に思い当たるところがございましたらお教え頂けますと幸いです。

<後略>

■回答■

確か貴社にはその昔、私が未だサラリーマンだった頃におじゃまさせて頂き、フロントローディング設計へのCAE活用(当時は設計業務へのCAE技術の効果的活用と呼んでいたが)について講演させて頂いた記憶があります。

その席に**さんがおられたか否かは承知しませんが、恐らくあのときお伝えした、考え方や活用方法を、採用頂けていたならば、現在のような苦境に陥らずに済んだのではないかと思います。

製品開発や設計時点で用いられるCAEのあるべき姿、その活用方法への私の考え方は、昔から一貫しており、貴社で講演した時点でも、今現在でも変わっておりません。幸い講演内容を録音したカセットテープが残してありましたので、改めて聞き直してみましたが、基本部分では、今現在私が各所で喋っている内容と合致しておりました。因みに、技術士事務所開業前より、後になっての問い合わせに応えるため、重要(開業後は全ての講演を)な講演は、手持ちの録音機で録音保存をして参りました。

さて前置きはこれくらいにして、ご質問にお答え致します。まず最初のご質問、他社の状況ですが、これまで私が支援して参った先では、設計改革に成功した先は下より、残念ながら充分な設計改革までは至れなかった先でも、CAEを設計業務に生かして活用すると言う側面では、漏れなく成功しております。ですから当然の事ながらこれらの製造業では、CAE技術やツールは、製品開発若しくは設計業務にとって不可欠な道具として定着しております。

しかしCAE技術者若しくはCAE部門への評価という、**さんからのお問いかけに対しては、私がご支援申し上げた先の状況は、実はお答えしようがありません。なぜならば、**さんが現在受け持たれておられる性格(あくまでも私の経験的な推定ですが)の、CAE部門やCAE技術者が存在しないからです。

まず私がこれまで手がけた先では、受託解析的な業務を生業とする部門は、例外なく解散をして貰っております。CAEツールは原則的には、担当する設計者が自ら用いるルールを作り、受託解析は一切行わない仕組みを作っております。

しかし現実的には、流体と構造が連成する問題や、極めて高度な運動問題など、担当設計者やチームが技術的に手におえない問題の扱いや、いつも使っているわけではない担当設計者が、その都度CAEツールのオペレーションを覚えなければいけない、無駄の問題などがあります。

前者の場合には、それぞれのエキスパート(設計業務もこなせる)を複数名育成しておき、彼らを高度なシミュレーションを必要とする設計チームに配置をした上で、チームの一員としてこの役割を担う態勢を取って貰っております。

後者に対しては、CAEツールオペレーションを専門とするオペレータを、複数名(企業規模によっては総勢50名を超えるところもある)用意しておき、必要とする担当設計者の下に送り込み、オペレーションを専門に担わせる仕組みを、講じて貰っております。

ただしこの場合、設計者達には解析行為(モデル化(機械構造の把握・簡素化・荷重境界条件などのメカニズムの把握、条件値の設定他)、結果の評価、結果の設計への折り込み)のオペレータへの丸投げは厳禁しており、丸投げしようとした場合や、結果的に丸投げした場合には、始末書(イエローカード)を出させております。始末書が重なって、オペレータを付けて貰えなくなった設計者も、現実的には生じているようです。

そしてこのような前提の上で、予測設計用の雛形モデル構築、エキスパートの育成・配置、CAE活用技術のDB化及び水平展開、オペレータ育成・配置、などを担うCAE技術活用統括部門を設けて貰っております。CAEツールの導入やハード環境整備などもこの部門が担います。

一方、現状診断を行っただけで、実際の改革支援などに入れなかった製造業では、**さんが嘆かれておられるような評価に陥っていたCAE担当部署を、少なからず見て参りました。と言うか、私がご支援した先でも、その殆どで、改革着手前には、同様な状況に陥っておりました。

ですから、貴社の状況は決して珍しくはない状況であり、それを解消するためには、私がこれまで各所で手がけてきた方法を、参考にして頂けると良いでしょう。当然ご依頼を頂ければ、喜んでご支援申し上げます。

二つ目のご質問「また我々としては十分に仕事をこなし、評価されるべき成果をこれまで残し続けてきたと自負しているのにも拘わらず、弊社のような悪評価をCAE部門に下されるのか、ご経験的に思い当たるところがございましたらお教え頂けますと幸いです。」は、簡単に言ってしまえば、これまで皆さんが行ってきたCAE解析業務が、貴社の事業収益を出すために、役に立って来なかったと言うことに尽きると思います。

何が悪かったかは、私どもの現状診断を受診頂ければ明確になると思いますが、恐らく**さん達は受け身な立場で、設計者達と接してきたのではないかと思います。責任を負わない受託解析業務です。これでは皆さんが苦境に陥るのは当然の成り行きで、今まで問題視されてこなかったことに、疑問さえ抱きます。恐らく歴代の責任者達がボロを巧くカバーしてくれていたのでしょう。

製品開発や設計業務にとってのCAE技術は、あくまでも高品質で低コストの製品を、滞りなく最短で開発を行うために用いる、一つの手段にしか過ぎません。この手段がタイムリーに答えを出してくれなかったり、当てにならない結果ばかり出していたのでは、設計に貢献できているとは言えません。例えそれが学術的に、最先端の成果を出していたとしてもです。このあたりが、皆さんが評価されない原因だと思います。