CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

ミニDRへの物作りメンバーの参画を、どのように行うと効果があるのか?


■質問■

<前略>

3ヶ月以上に渡る大連載、興味深く拝読させて頂きました。私たちの部署では、私以外にも何名かの者が、連載を拝読させて頂いておりました。

このような中で、いつの間にか自然発生的に、これらのメンバーが集まって、感想や見解を共有する機会が幾度か設けられ、様々な意見交換を行ってまいりました。

そして、「これまで私たちが行って来た設計部署に対する改善・改革の取組みが、本当に正しかったのかを、一度冷静になって振り返ろう」と言う問題提起が複数のメンバーからなされ、盆休みあけを目処に取組みを開始する運びになりました。先生の連載を参考にさせて頂きながらのつもりです。

そこで、何点かの疑問があり、もしよろしければ、ご教示頂けますと幸いです。

質問事項1 ミニDRへの物作りメンバーの参画を、どのように行うと効果があるのか?

連載では、「だから、詳細設計途上や、詳細設計が大詰めに入ったときに、物作りメンバーがその設計内容を覗き、物作り側からのシミュレートを行い、最適な設計に直させることは、極めて重要な取り組みである。」と述べておられますが、日々膨大な担当業務を抱えて、休む暇もなく駆け回っている、物作りのスタッフメンバー達は、恐らく生産準備段階にはいると自分に担当が回ってくるだろうと判っていても、正式に担当を任じられるまでは、易々とは動けない現状が弊社にはあります。

また連載では、さらに「これまで私が手がけたところでは、ミニDRと言う、改まった場面を設けなくも、鋳物型を担当する者、ダイキャストや射出成形金型を担当する者、製缶を担当する者、プレス金型を担当する者、機械加工を担当する者、組立を担当する者、など各々が、それぞれの担当する部位の設計を進めている、設計者の元に時々出向き、その設計内容の説明を受けながら、物作り側からの見解や要求をして貰う文化を、構築して貰ってきた。これは、商品企画やサービス技術なども同じである。」

「いずれにしろ、試作図面まで至っていない段階で、可能な限り物作りなどの都合を織り込んでおくことは、試作評価より後で生ずる“手戻り”“後戻り”を根絶する、極めて効果的な手当なのだ。」と述べられておられますが、全くボランティア的に彼らが動き回ることはないと思います。

先手を打つことが、自部署全体から見たときに、大きな効果があるとしても、生産準備段階などで、自分がその機種を担当しなければ、お人好しのボランティアになってしまいます。何か業務分掌や分担任務などに工夫を成されて、このような態勢を柔軟にとれるようにしているのではないかと思いますが、具体的にどのようにされているかをお教えください。

コンサル料をお支払いしているわけではありませんので、無理な場合にはヒントだけでもお教え頂けますと幸いです。

<後略>

■回答■

これまで、先手を打って物作りノウハウや都合を、設計に織り込もうとする文化が無かった製造業で、全くの工夫無しにこのような仕組みを作ろうとしても、当然無理だと思います。

私がこれまで手がけて来た製造業には、概ね次の3パターンがあり、それぞれの状況に応じた文化作りに取り組んで参りました。

まず最初のグループは、TQCの時代から培われてきた、良い文化が残っている製造業です。30年以上に渡り設計の早い段階で、設計内容をある程度吟味して、自工程の都合やノウハウを設計内容に織り込んで貰うことで、より効率の良い生産準備が叶い、量産の垂直立ち上げが叶うことを、幾たびも経験してきた製造業です。

これらの成功体験が功を奏して、いつの間にか、先手を打った設計チェックができる生産技術者が、高く評価されようになってきたケースです。当然彼らの評価は、高い人事考課や昇進に直結し、物作り部隊幹部の殆どが、このような体験をしてきたメンバーで固められるようになっております。

こうなると、ミニDRへの物作りメンバーの積極参画どころか、設計執務室を巡回して、当たり前のように、先手を打った物作り都合の折り込みを、行なえております。

しかし、このような文化は、若手設計者達にとっては、極めて不愉快で煩わしい文化であり、私が行ったヒアリングなどでは、何処でも若手設計者達から“問題だ”との指摘がされます。しかし多くの場合ベテラン設計者達は、この文化を良き文化と理解しており、「若手設計者の早期育成にも役立っている」と、概ね満足していました。

そしてこのような製造業には、特に本件を目的とした仕組み作りや、お膳立てを行なわずに済んでおります。

ただし注意しないと、我田引水的な、組織の都合だけを最優先した要求を、設計サイドに投げかけ続ける、悪循環を起こす例があります。他のケースでも同じですが、全体最適化思考が巧くできない者が、物作り側メンバーに、入り込んだ場合に生ずる悪現象ですので、この点は留意する必要があります。

次のパターンは、コンカレントエンジニアリングなどという言葉がはやりだしてから、それとなく組織体制の組み替えを模索してきた製造業です。しかしかけ声とは裏腹に、なかなかコンカレント開発体制に至れず、模索しているパターンです。

そしてこれらの多くでは、設計、生産技術、製造、資材、生産管理などの各部門間に厚い壁が存在して、「人の仕事に余計な口出しするな!」的な雰囲気が漂っており、DRなどの場面での問題指摘や物作り側都合要求も、腰引きぎみか、我田引水且つ高圧的な要求のいずれかに終始しているようなケースをよく見かけました。

このようなパターンでも、組織の壁が割合低く、スタッフ達の意識やコンカレント開発に対する理解が高い場合には、開発機種が立ち上がるごと、各部門担当者を明確にして、その開発の成否を、それぞれの人事考課に反映させる仕組み作りだけで、済んでいるケースもあります。

しかし組織の壁が高く、コンカレント開発に対する意識が低い場合には、次のパターンの場合も併せ、“クロスファンクションプロジェクト”態勢に移行することをお勧めしてきました。

3つ目のパターンは、連載で紹介したX社のようなパターンです。


クロスファンクションプロジェクトについては、以下を参照ください。

05/12/16何故コンカレント開発は必要か、どの様に進めれば良いのか(その3)
05/12/23何故コンカレント開発は必要か、どの様に進めれば良いのか(その4)
05/12/30何故コンカレント開発は必要か、どの様に進めれば良いのか(その5…最終回)

尚上記記事は、本ホームページ会員以外の閲覧ができませんので、会員以外の方々は、以下の雑誌連載を参照してください

日刊工業新聞社「機械設計」誌 連載!!「グローバル競争を勝ち抜く “攻め”の設計改革講座」
2006年4月号 P116〜119 第十回「第一歩として始めるクロスファンクション開発プロジェクト
2006年5月号 P56〜59  第十一回「クロスファンクション開発プロジェクトの組織と役割、運用」