CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

FS(フィジビリティースタディ)を採用して成功した事例を教えてください


■質問■

<前略>

連載の途中から、会員以外は読めない部分が多くなりすぎ、完全にFS(フィジビリティースタディ)を理解できませんでしたが、その目的や期待できる効果は、十分に理解できました。追って閲覧会員の申し込みを行い、読めなかった部分もしっかり拝読させて頂こうと思います。

しかし詳しい内容(読める範囲で)を、繰り返し読んで見たのですが、私の常識から考え、この取り組みは、相当に手間の掛かる取り組みと見ました。スタディーに参加する面子や要求される能力などを考えたときに、現実的にはすぐに効果が出せる取り組みとは思えません。

例えば、設計技術サイドに一切の無理強いを犯すことなく、抜群な市場競争力を持った製品開発仕様に落とし込むことが、現実的には不可能ではないかと思います。恐らく先生もそこまで追い込めと言っているのではなく、可能な限り極限を目指して、徹底したスタディーを行えと言うことだとは思いますが、どこで良しとするかの案配の付け具合が、極めて難しいのではないかと思います。

さらに、中途半端なメンバーが集ってこのスタディーを行っても、先生が何かの著書で使っておられます“烏合の衆の時間つぶし“に終わる可能性があり、その結果を錦の御旗の如く掲げ、開発に突入されてしまったのでは、かえって悪い結末に陥ることは必定です。

また設計思考展開手法もやっかいで、適任の司会者が確保できなかったり、必要メンバー(頭数ではなく、場面場面で必要とされる知識と知恵を持った人たち)が集まれないと、効率よく展開が進まない欠点があります。

余談ですが、弊社では5年ほど前から先生の御著書をバイブルに、設計思考展開手法を導入しているのですが、巧く活用できるメンバーと駄目なメンバーとの間で、その展開結果の差が大きく、一度先生のご指導を仰ごうと思っておりました。

そこでお教え頂きたいのですが、これまで先生がご指導をされてきた各社では、どのくらいの期間で効果を得られるようになったか、それにはどの程度の工数と費用を費やしたのか、そして最終的にどのくらいの経済的な効果をもたらしたのかなど、具体例をご紹介頂けますと幸いです。

当然企業名や対象製品名などは伏せて頂いて構いませんし、金額は比率などで構いません。出来ましたら弊社に近い製品を扱っているご指導先の例をお教え頂けますと幸いです。

<後略>

■回答■

私の提唱致します設計思考展開手法を、ご採用頂きありがとうございます。ご依頼頂ければ喜んでおじゃまさせて頂き、何が問題かを把握させて頂いたうえ、より短期間で効果的に活用できるように、鋭意お手伝い申し上げます。

さてお問い合わせの件、FS(フィジビリティースタディ)手法は、私が世の中に広く提唱する以前の1996年頃から、複数の支援先で模索を始めておりましたので、これまで直接ご指導申しあげた件数は、既に30件に届こうとしております。

ご質問への回答としては、貴社に類する製品を専ら扱っている支援先だけに絞っても良いのですが、この場合その活用状況の全貌が見えず、私の回答内容を誤解されてしまう危険性がありますので次のような回答形態にさせて頂きます。


全体業種;私どもがこれまで支援を差し上げた全ケースから見た場合

類似業種;貴社の製品特性に近いと思われる、割合短期間でモデルチェンジが繰り返される、コンシューマー商品を扱う部門に
        限定した場合


ご質問1 どのくらいの期間で効果を得られるようになったか?


全体業種;半年〜10年(模索段階を除き)

初期に支援していた先は、中核のツールとして用いる“設計思考展開”手法も含め、私ども自身が、試行錯誤的な模索状態でした。このため、長いところでは10年がかりで、その効果を享受できるようになったところもあります。中にはなかなかゴールが見えず、途中で頓挫したところも少なからずありました。しかし2000年以降の取り組みでは、概ね滞りなく実用化に漕ぎ着けております。その結果現時点では、以下の5要素を把握できれば、効果享受可能期間を的確に予測出来るようになっております。

5要素とは、対象製品の複雑さ、対象商品の市場把握度、対象製品のメカニズム把握度、担当するメンバーの能力、企業として持つ企業力(企画・開発・物作り・販売などの能力)の5点です。各々がその着手時点で、どの程度のポテンシャルにあるかで、その期間が大幅に左右される事になります。

また私が全面的にFS(フィジビリティースタディ)から、その後の開発作業に参画して導入を図る場合と、費用的に最低限のお手伝いを申し上げる場合でも、期間は大幅に変わって参ります。


類似業種;半年〜4年(模索段階を除き)

他に比べて、相対的に製品構造がシンプルな事と、市場把握度が高い支援先が多かったため、このような結果になっております。


ご質問2 どの程度の工数と費用を費やしたのか?


全体業種;あらためての発生は無し

貴社の類似業種も含め、結果的には改めての新規工数の発生や費用の発生はありませんでした。その殆どで着手時点(最初のプロジェクト)から、結果的にはそれまでの製品開発と比較して、悪くてもトントン、中には最初から開発工数、開発費用を半減できた例もありました。

これは、FS(フィジビリティースタディ)から、その後に起こる可能性のある手戻り後戻りを可能な限り予測して、その原因を徹底的に潰し込んでいるためです。要するに私が提唱している“フロントローディング設計”を徹底実践しているため、結果としての後追いの工数や費用が大幅に削減でき、上記のような結果をもたらしております。


類似業種;表1に類似業種の例を載せます

このケースでは、最初のプロジェクトから、大幅な工数削減と費用削減を果たしております。私が全面的に入り込んで、ご支援申し上げましたが。

表1の読み方は、上段開発費用削減分の内、半分以上は工数削減分で、その分の開発工数が削減できております。一方下段の人材育成・技術の仕込み・改革施行費用は、その殆どが人件費で、取り組みに費やした工数と言えます。

本ケースでの削減効果は、開発費用の削減効果より、その後工程での削減効果が大きいのですが、仮に開発費用の半分の削減が工数削減と考えても、トータルで5億6000万円余りの削減が実現できております。

一方、費やした工数側では、本取り組みを行うに当たって改めて発生した工数は、改革施行に掛け人件費の5600万円だけです。人材育成費や技術仕込み費を加えても4億円あまりで、最悪でも1億6000万円余りの工数削減がはかれた結論になります。


ご質問3 最終的にどのくらいの経済的な効果をもたらしたのか?

表1に経済的な効果も記載してありますので参照下さい。膨大な経済効果が得られていることをご理解頂けると思います。


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表1 FS(フィジビリティースタディ)手法導入効果の例