<前略>
弊社では、この20年来フロントローディング設計の定着に力を注いで参りました。その結果、製品が持つべき性能の予測や、強度、耐久性などのフロントローディング設計、また樹脂成形や様々な加工技術に関するフロントローディング設計も、手前味噌ながら成功できたと自負しております。
しかし一方、様々な試行錯誤を繰り返したのですが、弊社製品では宿命的に付合わなければならない、音・振動問題に対するフロントローディングがどうしてもうまく行きません。そのため試作工場では、彼方此方で試作品に対する加振試験や、騒音測定試験が繰り返し行われている始末です。
一方私は、フロントローディング設計実現への取組みを当初担当したのですが、この10年は、開発部署を離れ商品企画などの仕事をしており、直接フロントローディング設計への関与をしておりませんでした。しかし開発期間の短縮が、近年頭打ち状況にあり、又出荷後の品質トラブル(主に重大事故やクレーム)が頻発することに業を煮やし、上層部に大見得を切って、この4月に開発部署に再び戻ってまいりました。
その後、開発期間の短縮を妨げている原因や設計品質が低下している原因を私なりにしらみつぶしで追った結果が、上記した問題です。この問題に気付くまでは、性能確認評価試験を行っている物とばかり思っていたのですが、実態は20年前と全く変わらない状況でした。
具体的には、まず問題点を計測試験で洗い出し、そこに従来常識で考えられる防振や振動絶縁を、試行錯誤的に施し、徐々に問題を潰し込んで行くやり方です。当然このアプローチでは、イタチごっこに陥るケースが多く、開発期間短縮が一向に実現できない原因になっておりました。
さらに、このイタチごっこでも最後まで問題点を徹底的に潰し込んであればよいのですが、指定された開発期間をなるべく守るため、潰し込みが不完全な状態で、強引に量産移管を行っており、これが出荷後の品質トラブルの主な原因でした。
そこで設計担当者や振動・騒音問題をサポートするメンバーに、先生が御著書でも記されている「設計の初期段階で、振動・騒音に対する素性の良い全体構造を確立できないと、いつまでもイタチごっこを繰り返すことになる」と言うお言葉をあげ、現状の問題点を指摘するのですが、彼らからは「簡単で部品点数の少ない構造なら能書き通りできるかも知れないが、ウチの製品は、構造も複雑だし、又フニャフニャだし、部品点数も多すぎる、一々部品レベルから積み上げての予測シミュレーションなど物理的に無理だ」との反論が帰って参りました。
そこでお教え願いたいのですが、本当に弊社のような製品では、音・振動問題に対するフロントローディング設計は、無理なのでしょうか。
<後略>
CAEツールの進化の歴史を、追ってみて頂ければ分りますが、これらの問題を事前予測する目的で、CAEツールの技術革新が行われた経緯があります。特に自動車の世界では、この30年来のこの面での技術革新は目を見張る物があります。
そしてこれらは、自動車に限らず、建設機械などの重工製品でも、その効力を大いに発揮しておりますし、コピー機のような事務用機器や白物家電にまで、あらゆる音・振動の問題を抱える、広い範囲の製品に対しても、その効力を発揮しております。
そして、これまで私が直接手がけた、100社を越える製造業における、フロントローディング設計導入の取組みでも、少なくない製造業で、音・振動問題に対するフロントローディング設計を、実現して参りました。その中には、貴社製品に極めて近い製品を、扱う製造業も複数あります。
頂きました情報の範囲では、手順を踏んで、フロントローディング設計実現への取組みを、行ってこられたように診ますが、音・振動問題に関しては、何か根本的なアプローチミスを犯されていると思えてなりません。
なぜなら、**さんが商品企画部署に居られたとしても、絶えず製品開発には関わっていたはずです。それなのになぜ、開発部署に戻ってから、改めて問題点の探索を行ったのか。20年前にフロントローディング設計導入を主導した**さんが、なぜそれまでに、問題の根っこを、把握できていなかったのか。と言う疑問がまず挙げられます。
さらに問題は、担当設計者や振動・騒音問題をサポートするメンバの発言です。余所でできていることが、自分たちにはできていないという自覚が恐らく無いのでしょうが、余りにも不勉強すぎると感じます。
少なくともCAEソフトのユーザー会などで、貴社に類する製品における、音・振動問題に対するフロントローディング設計技術の成功例を、私の教え子達が、複数製造業から発表しております。
これらから察するに、貴社は、その取組みのスタート時点で、何か大きなボタンの掛け違いを、犯しているのではないかと、思えてなりません。
一度お邪魔させて頂いて、これまでの具体的なアプローチ経緯を含め、このあたりの所を詳しくお聞かせ頂ければ、大きなボタンの掛け違いが、直ぐに見つかると思います。それをどのように軌道修正するかなどの将来の話を抜きにして、ボタンの掛け違い探索だけなら、1〜2日もあれば叶うと思います。
ちなみに費用的には、貴社との今後のお付き合いを期待して、一日50万円(一日は7時間換算、旅費、宿泊費、日当、税など別途)で行わせて頂きますので、宜しければご依頼下さい。