<前略>
弊社では、恐らく創業以来、そのコードに意味を持たせた、品番体系を用いて参りました。生産業務がIT化される前に、その業務効率を最大限狙った仕組みです。そして弊社に入社した新入社員は、その一連の教育の中で、必ず弊社の品番体系の素晴らしさを、先輩社員達から吹聴されてきました。
ところが昨今、この我々の誇りを打ち砕く事件が頻発し、この伝統ある品番体系を捨てざるを得ない状況に、追い込まれております。
生産拠点が国内だけに留まっていた時代や、精々北米の生産だけで済んでいた時には、ルールを守ることがあたりまえの世界で、特に問題が生じなかった、品番に割り振った意味が、某国生産品で、重大なクレーム問題を引き起こしてしまったのです。
さらにそのクレーム発生の原因を調べる中で、それを原因としたクレームは、まだ顕在化していないのですが、品番が意味を持つ故の手抜きや、その場しのぎが蔓延していたようです。
具体的には、材質と防錆処理が異なるが、形状・寸法的には同一の部品(当然品番コードの一部が異なる)を、寒冷地向けに製品に装着してしまい、昨夏あたりから頻繁にクレームを起し、膨大な損害を生じさせてしまいました。そしてなぜこのような問題を、生じさせたのかを追った結果、我々が誇りに思い、長年愛用してきた品番体系が、その一因となっていることが判ったのです。
ことの顛末ですが、現地の部品外注先(現地企業)の背信行為が発端です。調査段階では、「我々は正規品を納めた。そちら側の受け取り検査でも何も言われていない」とシラを切るのですが。指定された防錆処理に用いる液剤の、入手ができなかった(どうも価格的に折り合わなかったらしい)ことが、今回の問題が露見した始まりのようで、この外注先は、承知の上で指定防錆処理以外の処理を行い、とぼけてNG品を納入していたことが判りました。
一方弊社現地法人側の対応ですが、この部品は前年度も当該業者からの納入実績があったため、特に初品扱いをせず、必要最小限での抜き取り検査だけで、問題部品を受け入れていたようです。ただ現地採用の中間管理職は、NG品が納入され始めてから一ヶ月目ごろ、防錆処理が違うはずなのに、一般地向け部品と色が同じことに気付き、納入業者に問いただしたようです。しかし、「指定通りやっている、試験データも添付してあるではないか」の一言で片付けられてしまったとのことです。実際には、相応の鼻薬を効かされたようですが。
さらに調査を進めて行くと、このNG部品は、防錆処理が指定以外だけではなく、その材料も、指定外材料(一般地向けと同一材料)を用いていたことが判り(防錆処理をごまかす以前から)、膨大なクレーム費用を費やさなければならない結果になったわけです。
そして、なぜ安易にこのようなごまかしが行なえたかを追ってみると、話は簡単で、わかりやすくコード体系化していた弊社の伝統的な品番体系が、仇となっていることが判ったわけです。
要するに形状・寸法・用途部分のコードが同じで、材料と表面処理が異なる品番部品は、機械を組み立てる上では全く支障が無く、またその見た目の機械機能にも悪い影響を及ばさないことが、誰でも判るわけで、このわかりやすさが、悪意を持った現地外注業者に、つけ込まれたと言う顛末です。
そしてさらに調査を進めると、日本国内や北米では生じなかった、部品調達が間に合わない場合などに、別コード部品の流用に代表される、品番が意味を持つ故の手抜きや、その場しのぎが、サービス工場を含め世界各所で蔓延していたようです。
現地出先のサービス工場における、一時しのぎ的な対処には、部品の供給能力上のやむを得ない事情もあり、追って正規品を付け直すことを前提にした一時しのぎである場合には、容認できるとしても、生産拠点におけるこのような状況は、一掃すべきと新品番体系構築へと舵切りを行った次第であります。
そこで先生にお尋ねしたいのですが、弊社がこれから行おうとしている取組みに、ご助力を頂ける物でしょうか。また弊社のような内容の取組みに関して、先生のこれまでの実績はどのような物がありますでしょうか。またその際の御費用はどの程度見ておけばよろしいのでしょうか。
<後略>
ハイ喜んでお手伝いさせていただきます。
品番体系のあるべき姿については、一家言を持っており、その考え方に基づいて、これまでも各所でその構築を行って参りました。私の一家言は、それ程難しい品番体系の考え方ではなく、結論から申せば、「品番には意味を持たせるな」が大原則です。
当然標準部品や、設計変更に伴うリビジョン管理などには、起こるであろう不都合を、可能な限り排除した、合理的なコード体系化が必須と考えておりますが、一般部品には、貴社で生じたような不具合などを防止するためにも、「品番には意味を持たせるな」と言う考え方を、30年以上前から主張しております。
生産管理がIT化される前の、人力で伝票・帳票処理がなされていた時代、また帳票で組み立て指示などがなされていた時代には、帳票作成者・使用者・部品管理者などの、ミス防止という意味で、意味付き品番は、大きな意味を持っておりました。
しかし全てがIT科された現在、品番コードに意味を持たす必要性は、ほとんど無くなっているはずです。精々図面は同一なのだが、塗装色や成形混入顔料だけが異なる部品などの場合に、図番末尾に塗装・顔料コードを付加した品番とする程度でしょう。
実績としては、客先の具体名は出せませんが、以下に示す代表例のような、次世代生産体系確立を核にした取組みの中で、品番体系を再構築して行く取組みを各所でこなしてきました。
私の基幹事業である“開発業務改革”“商品開発改革”“設計改革”などに目処がついた後は、必然的に“次世代生産システム”へとなだれ込んで行くのが一般的ですから。最近では、この分野の仕事の方が多いと思います。
費用につきましては、上記事例では2000万程度〜億単位、期間的には2〜5年を費やしております。貴社でどの程度見ておけばよいかは、一度打合せをさせて頂いてから、ある程度精度の高い物を提出させて頂きたいと思います。とりあえずの費用枠としては、貴社の規模及び商品の内容から見て、私にお支払い頂く費用は、4〜6年、5,000〜20,000万円程度は必要と考えます。これ以外にシステム開発費や、次世代生産システムの試行など、膨大な費用を御覚悟下さい。