<前略>
自分も推進者の一人でしたので言いづらいのですが、弊社で行った3D CADやCAEの導入は失敗に思えてなりません。
弊社が3D CAD導入に取りかかったきっかけは、御貴殿の著書「3次元CADによる設計の改革術」に、当時の技術本部長がいたく感銘を受けて発した、「我が社でも3次元CADの導入を始めろ」という鶴の一声でした。
早速主だったメンバーが招集され、その導入検討に取りかかったのですが、導入後どのような活用を行うのかが、なかなか折り合いを付けられず、このあたりを曖昧にしたまま販社の提案に乗る形での導入を進めてしまいました。
販社の提案では、「CADを3次元化することで、開発企画段階から設計段階、さらには生産段階までのデータの一貫性が確立でき、円滑且つ高品質な製品開発が叶う」という物でした。またごまかしのきかない3D CADは、設計者達が行う設計の質を画期的に向上させ、設計プロセスの画期的な改革が図れる」と言うことでした。さらには「CAEとの連動でフロントローディング化が図れ、手戻りの一掃が実現できる」とも申しておりました。
一方御貴殿の著書では、「必ずしも良いことばかりではなく、明確な目的を持った計画的な取組みが必須」と注意されていたと思います。しかし、これを販社のコンサルタントに伝えると、「御貴殿が、仕事ほしさに、あえて3次元化を難しい物のように触れ回っているだけだ」などという答えが返ってきて(もっとひどいことも言っていましたが)、私を始め当時の導入担当者達は、すっかり丸め込まれてしまいました。
しかし数年経ち、すっかり販社に丸め込まれていたことに気付いたのですが、時既に遅しで、振出しに戻って仕切直しを行うわけにもいかず、結果として優柔不断なまま現在に至っているというお粗末な状況です。明らかに弊社の3D CADは、設計の生産性を落した状態のまま使われているという、悲惨なありさまです。
一方弊社もご多分に漏れず、設計部署への優秀な人材が途絶え、またベテランの設計者達は、設計以外の部署に転出するか、早期退職を行うかなどして、どんどん設計の人材が少なくなってしまいました。
このためだと認識しておりますが、従来なら考えられないような設計ミス、極めて愚かな誤りが頻発するようになって来て、早急にその対策を取る必要に迫られております。
そこで御貴殿に質問ですが、「弊社のような状況に陥った、不始末な設計現場に付ける、何か良い薬は無いものでしょうか」。無い物ねだりであることは、重々承知しておりますし、御貴殿が御著書で警告したことも蔑ろにした上での体たらくですので、質問する資格すらないのかも知れませんが、何とぞ弊社の苦境をご高配頂き、我々が苦境から脱出できる秘策をお授け頂けますと幸いです。
<後略>