CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

設計思考展開を活用しようとするが、これを利用したレビューへの肝心な参加者が不調です。どうすれば積極的な参加者を増やせるか?(前編)



■質問■

過日は、極めて短い期間でお願い致しました現状診断を、的確且つ高品質に実施頂きありがとうございました。関係者一同、先生から頂きましたご指摘及びご提案を重く受け止め、殆ど先生のご提案に従う形で、この3年間、製品開発業務の徹底改革に邁進して参りました。

本来ですと先生にお出まし頂き、日々発生致します懸案事項や我々の思い違いなどを、ご指導ご指摘頂きながら取組みを進めるのが最良の道だとは承知しております。しかしご案内の通りの弊社経営環境では、その予算措置も儘ならず、なかなかお出まし頂けないことを心苦しく思っております。

今後の景気動向も、なかなか読め無い面が多々ありますが、近いうちに必ずお出ましを願えるよう計画を進めておりますので、今暫くお待ち下さい。

さてこのような現状ではありますが、なるべく早く先生のお考えを伺った方がよいと思われる懸案事項が発生しており、厚かましくもお問い合わせさせて頂きました。

懸案事項とは、先生のご提案にもございます設計思考展開手法を用いたDRやミニDRへの参加者の問題です。

設計内容のレビューを受ける当事者達は当然参加するのですが、それ以外の、当然参加しなければならない後工程を担う当事者の、参加不調の問題がまず挙げられます。一応関係部署のメンバーがアリバイ作り的には参加するのですが、レビューへの実質的な参加が行われておらず、量産開始直前になっての製造側都合による設計変更要求が一向に減少致しません。

トップダウンで、関係役員に「量産開始直前の製造側都合による設計変更要求を一掃しろ」という号令を出して貰って、徐々に改善がなされつつはあるのですが、未だ不十分です。

さらにそれより困っているのは、当事者以外のベテラン設計者他関係技術者達の参加問題です。先生方のご提案では、「ボランティア的な位置づけにしてはいけない。彼らが積極参加したくなるような何らかのメリットがなければならない。例えば彼らが指摘・指導した結果生じた貢献に対して、適切な評価が下されるような仕組み作りである。」と明記頂いておるのですが、この部分がなかなかうまく行かず思案に暮れております。

だだ参加しただけで評価ポイントを付けるわけにも行かず、また是非参加して貰いたい方々は、その本来業務が多忙なため、なかなか参加する時間が捻出できません。一方時間つぶしとしか思えないような暇な方々が少なからず参加し、的はずれな指摘やお言葉を発するため、レビューに混乱が生ずる始末です。そして結局は、先生からもご指摘頂きました、声の大きい開発担当役員の鶴の一声が、レビューの結果を左右してしまうような状況から脱却できずにおります。

一方形態的には、極めて似通ったレビューの場面でありますフィジビリティースタディは、大分様子が異なります。フィジビリティースタディは、関与する部署の本来業務を、よりよい結論に結びつけようとする取組みですので、参加者達の目の色も異なりますし、参加者達の質もDRなどの参加者達とは大きな違いがあります。その結果この一年開発を行った新製品では、全くハズレの開発を行わずに済ますことができるようになりました。

そこで是非ご助言を頂きたいのですが、上記いたしました二つの問題点にたいして、先生がご指導にお出まし頂くまでの繋ぎとして、当面我々だけで打てるであろう、効果的方法がございませんでしょうか。

■回答■

まず設計思考展開の使い方に問題があると思います。本来なら、的確に設計思考展開を進めておれば、暇つぶしの方々から発せられる的はずれな指摘や指導は、たちどころに排除できるはずです。また筋が通らない声の大きな役職上位者の押しつけも、論理的に排除できます。

これらが貴社の現状でできていないと言うことは、恐らく設計思考展開が形式的に行われているのではないかと思います。私の著書を改めて読み直して欲しいのですが、参加者全体が、特に展開を引っ張る司会者が、論理的に可能な限り、洗いざらいの、目的に対する展開を行えたなら、少なくとも“的はずれな指摘や指導”“声の大きな上位者の押しつけ”は、一気に解消できるはずです。

少し費用は発生致しますが、司会者要員の教育を早急に行うべきだと考えます。費用的には、人数は20名以下程度、期間2週間(10日)、費用500万円(旅費・税・諸経費など別)でお受け致します。

通常では、私のご指導の中で、その実務を通じてOJT的に司会者要員に育って頂くのですが、貴社の場合は、現状診断以降のご支援が叶わない状況で現在に至っております。ですから実際の設計思考展開作業場面で司会を行っている方々は、私の著書をお読み頂いた上で、それぞれ自己流でその司会方法を模索されているのだと思います。

確かに貴社経営状況が芳しくないことは承知しておりますが、上で推察したような無駄を、短期間で解消するためには、私が直接、貴社の司会者要員に対して、設計思考展開を、効果的且つ的確に遂行するための、司会方法・ツボ・コツなどを伝授した方がよいと思います。

次に若干は改善しつつあるとの、レビュー場面における後工程からの参加者不調の問題を、解消する方法の考え方を述べます。

-----以降は次週後編に続きます-----