3次元CADを設計上流段階から用いることに関しては、本稿の最初で述べたように、私は、マストだとは思っていない。しかし、商品(製品)開発全体から判断して、最初から3次元CADを用いた方が、設計初期段階を担う設計者達の負担を考慮しても、明らかに全体としてのメリットがあると認められる場合には、当然最初から3次元CADを用いるべきだ。
そしてこのような場合には、3次元CAD操作に難のあるベテラン設計者達には、専属のオペレータを付け、口とマウスで指示を出す方式で、設計者自らが設計をすればよいと、私は昔から提唱している(図1参照)。
一方私が支援を行ってきた製造業以外から、このあたりに関する問い合わせが頻繁にある。皆巧く行かず、悩んでいるからに違いない(様々な事例が本コーナには掲載してあります)。
そしてこれらの問い合せに対する私からのアドバイスは、“何を狙って取組を行うのか、そしてツールの活用は如何なる位置づけで”の項で述べた考え方を基本にしている。「何の為に3次元CADを用いようとしているのか?」「そもそも自分たちの設計業務の何を変えようとしているのか?」、これらを明確にすれば、自ずと取るべき道は見えてくる。あとは臨機応変な対応をすればよいと言うことだ。
ところがこのアドバイスは、上記した物づくり側の都合にウエイトを強く置いて、これらの取組を行ってきた製造業にとっては、極めて難しい要求である。恐らく戸惑いすら覚える要求の筈だ。なぜなら、その多くは、製造業にとってその製品開発の根幹を担う設計初期段階で、「より質の高い、より効率の良い設計を行って貰おう」などという観点が、全く欠落していた筈だからである。
また既に述べたが、結果として3次元CADなどの道具を過大評価し、「道具を入れて使えるようになれば問題は解決できる」などと言う、愚かな妄想を抱いたまま取組に突入してしまった製造業も、同様な悩みを抱えている。そして彼らも、これらの指摘に、大きな戸惑いを抱くだろう。なぜなら私の指摘を受け入れて、方針変換を行うと言うことは、これまで自分たちの行ってきた取組を、全否定することになるからだ。
そして、これらの例に該当しそうな製造業は、上で述べたように、競合他社に取り返しの付かない差を、付けられている恐れがある。早急にこれまで行ってきた自社の取組を、徹底的に総括すべきだと考える。
尚、私にご依頼頂ければ、このあたりのプロとして、しかも第三者の冷静な目で、これまでの取組を洗いざらい確認をし、何が問題だったのかを明確にすると共に、今後の進むべき方向を提案させて頂くことは、吝かではない。