CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

改めて問う、設計に役立つ設計支援ツールとは(その8)

・・・詳細設計段階(量産出図段階)・生産準備段階で欲しい設計支援ツール


詳細設計段階(量産出図段階)で欲しい設計支援ツール


試作評価で、目標開発仕様をクリアーできると、量産出図段階に入る。多くの製造業では、この段階から生産準備の作業が並行して行われ、ここで改めて、物づくり視点での図面見直しが行われる。

上でも述べたが、本来なら(筆者の提唱するフロントローディング設計の考え方)、この段階になって初めて、物づくりの都合や制約を前提に、真剣に図面検証を行うなど以ての外なのだが、現実的には、この段階で行われるのが一般的だ。

さらに始末の悪いところは、この段階でも、充分な図面検証を、物づくり側が行わず、量産出図が済んで暫く経ってから初めて、「こんなのでは作れない」「こう変えてくれると安くなる」など、膨大な設計変更依頼書が出されてくる。このような、体たらくな製造業を、筆者が行った“現状診断”では、少なからず見かけた。

一方、この段階で、物づくり側の都合で要求されてきた設計変更依頼の内容が、その製品の基本性能や機能に影響を与えかねない場合の、依頼採用の可否の判断が難しい。このため、筆者が支援している製造業では、この段階での当該内容の変更依頼は、一切受け付けないルールを設けて貰っているところも少なくない。

なぜなら、改めて設計初期段階に戻り、依頼された変更内容が製品としての基本性能や機能に悪影響を与えないかの検討が不可欠であり、場合によっては再試作検証までをも必要とするケースが出てくるからだ。

ところが筆者が見てきた多くの製造業では、社内の力関係や政治的圧力に屈して、安易な妥協で設計変更要求を飲み、踏むべきステップも踏まず、その結果禍根を残しているケースが驚くほど多い。この時点での安易な妥協が、製品出荷後の大量クレームを引き起こしてしまっているケースが、少なくないからだ。

本来なら、この段階での設計作業を、質高く円滑に進めさせることができる道具の要件は、試作出図段階で用いる道具の要件と同じでよいはずだが、上記したような充分にフロントローディング設計態勢が取れていない製造業を考えると、次の要件も併せて必要になろう。




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生産準備段階で欲しい設計支援ツール


この段階での設計支援ツールは、筆者の独断と偏見で言わせて貰うと、既に世の中に充分揃っていると考えている。それぞれのソフト性能の優劣や、基本図形情報を送り込んで来る3次元CADなどとの連携の優劣など、様々な問題や差はあるにしても、それは時間が解決してくれる問題だと診ている。

一方、この20年間における、平均的な3次元化の流れを診ていると、生産技術などの物づくり側の都合で、3次元化が推進されたケースが少なくない。それまで3面図を見ながら、自分たちで金型加工の為の面張りを行っていたこれらの部署は、設計部門から3次元データが出てくれば、自分たちの工数を大幅に減少させることができるからだ。 

さらに組み立て性の評価や、治具設計などでも、3次元データが設計から出されてくると都合がよい。このため、物づくり側(特に生産技術部門)が要求した3次元CADを、設計部門も含め、全面採用している例が極めて多い。

ところが、多くの製造業の設計部門では、設計の根幹部分である、構想設計や計画図設計の初期段階で、3次元CADがほとんど用いられていない実態がある。筆者が行った“現状診断”のみならず、最近ではPTCでさえ、この事実を問題視していた(設計製造ソルーション展2010におけるPTCブースのプレゼンテーションでは)。

少なくとも筆者が詳細を把握しているケースでは、生産技術主導で導入が行われたCADの場合には、設計上流段階に行くほどその活用率は低く、3次元CADは、オペレータと若手設計者の一部だけが操作している例も少なくない。

そしてこれらのケースでは、3次元CADを本来の設計作業に用いているのではなく、ポンチ絵や2次元CADで粗々に設計された結果を、3次元モデリングしているにしか過ぎない場合がほとんどである。確かに部品設計時点では、若手設計者達が設計作業に用いていると言えないわけではないが、それぞれの製造業が扱う製品の、根幹部分の設計では無い場面だ。




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