本稿で設計支援ツールを語るにあたり、設計という行為を私なりに、改めて見直して見る。
なぜなら「設計者の為のツール」とか、「設計改革をもたらすツール」などと言われ、世に多く出回っているツール群の中には、私の目から見て、平均的な設計部署で本当に役に立つ道具かと、疑問を抱くような代物も少なからずあり、これらが大手を振って蔓延っている現実があるからだ。
しかしこれらも、全く設計の為の道具で無いかと言うと、“否”であり、極めて限定的な製品や設計フェーズを、サポートしているツールであったりする場合がある。これらは、それぞれの開発元・販売元が勝手に定義する“設計”が、てんでばらばら故に生ずる問題である。せめて売る側が、設計と言う行為を理解して、奨めて良い道具なのか否かを峻別しながら、これらツールのセールスを行ってくれればよいのだが、実態は巧くいっていない。
一方、あらゆる製造業の設計現場における“設計行為”を一言で括るのには、大きな無理がある。例えばその扱う製品の特性や規模により、設計行為に参加する人数が数名から数千名を越えるようなケースまで千差万別であり、またそれに参加する企業数も、一社単独のケースから数百社を越えるケースまで様々である。当然これらの違いにより、意思決定の行い方から仕事の流し方、役割の分担の仕方など千差万別であり、故に一義的に語るのは無理であると言うことである。
一方私は、独立開業してから19年、それ以前の10年を含め30年余り、我が国を代表する多くの製造業の設計現場と付合ってきた。特に独立開業以降の19年は、専ら、それぞれの設計部署における設計業務改革、即ち製品開発の生産性向上(開発期間・コストの大幅削減など)や設計品質の大幅向上(手もどり後戻りの根絶、量産垂直立上げ、市場クレームの根絶など)の取組を支援してきた。それぞれの、どろどろとした設計現場に入り込み、様々な柵(しがらみ)や経緯(いきさつ)を乗り越えての取組であった。
そしてこれらの経験から、自社で商品を開発・生産・販売している製造業という括りにした場合には、概ねその“設計行為”は、表1,図1に示すような流れに括れる。特にこの20年来、私と共に様々な形で設計改革を成し遂げてきた、製造業における設計の流し方は、概ね以下のような流れになっている。また、今後の“設計を支援するツールのあり方”を考え検討する上では、このような括りを行っても問題は無いと考える。