<前略>
弊社は、創業以来金型の開発技術や高度な加工技術を売りに、様々な業種の金属部品加工を行ってまいりました。父親の代には規模拡大を毎年のように続け、20年前には茨城に最新設備を備えた新鋭工場を持つに至りました。
特殊な加工技術を持っているため、海外メーカからの引き合いも多く、20年前のバブル崩壊不況時は、ほとんど影響を受けることもなく、10年ほど前までは順調に業績を伸ばして参りました。
ところが、10年ほど前から我が国のメーカを中心に、特に量産部品の発注価格低下圧力が強くなり、収益率が低下し始めたところに、欧米メーカの横暴な要求や、振興の中国メーカなどからのでたらめな注文に、度々振り回され、それらが悪循環のように絡み合い、急激に収益率が低下してしまいました。さらに、リーマンショックによる世界不況で、ついに昨年は赤字転落となり、本年も赤字決算の予定です。
このような経営環境を打破すべく、様々な検討を行って参りましたが、その中で営業からCAEを導入すべきだという意見があがって参りました。CAEを武器に言い値とは言わないが、有利な受注条件で、コンスタントに注文を受けている部品メーカが、少なからずあるとのことでした。
確かに弊社と競合するメーカの中で、加工技術力は弊社より大分劣るはずなのに、忙しそうに仕事をしている所があり、そこでは大分前にCAEを導入して、社長が自慢していた事を思い出しました。
そこで弊社でも、CAEを導入し大手メーカに提案型の営業展開ができる様なスタイルに変換できないかと思いお問い合わせさせて頂いた次第です。
弊社が狙うような目的で、CAE導入を行う場合に、先生にご指導をお願いした場合に、どのくらいの期間と費用が必要になるのでしょうか。また、CAEは難しそうだと言うことは分るのですが、どのような人材がいればよいのでしょう。
<後略>
まず、貴社がCAEを導入して、それを駆使できる人間を育てたとしても、社長が期待されているような状況を簡単に作れるとは思えません。貴社を大手メーカが魅力に感じ、積極的に高い発注価格での仕事を、切れ目無く出してくれるような状態が作れるかというと、まず無理だと考えます。
さらに提案型の営業展開にも持ち込めず、CAEを使える重宝さだけが評価され、貴社の収益には余り寄与できない、便利屋作業だけが押し寄せる状況に、陥るのではないかと危惧しております。
貴社が目論む提案型営業を行うためには、顧客が開発する製品を熟知し、客先の担当設計者達が、貴社の設計者やエンジニアを頼りに感ずるような状況に、貴社の営業態勢を持ち込めないと難しいと考えるからです。
具体的には、まず当然のこととして、客先から期待されている、貴社が得意とする金属加工技術面からの様々なサジェスチョン(最短開発期間、最短加工コスト、最適加工歩留まりなど)を、的確に客先の期待に応えて行なえることが必須です。さらに提案型という観点からは、その部品が求められる要件や課題を、的確に配慮した設計案を提示できる必要があるでしょう。そうすれば客先の期待度は急速に高まると思います。
ところが、貴社得意の金属加工技術に関わるコメントもまともにできず、また客先の設計課題には蚊帳の外状態でしたら、その結果は火を見るよりも明らかなことになります。仮に金属加工技術部分のコメントでは、客先の信頼を得ることができたとしても、提案型営業に結びつけるにはインパクトが弱いと思います。
このような状況下で、例えCAEのオペレーションにいくら長けている技術者を持っていても、客先からは便利屋としてしか扱ってもらえないだろうし、提案形営業に結びつけるには程遠い話となることでしょう。
と言うことで、客先の製品開発段階で、「貴社にはこの部分の開発にお付き合い頂きたい!協力頂きたい!」と先方からオファーが来るような実力が、貴社に無い場合、提案型への転身を行いたくても、それは掛け声だけだったり、絵に描いた餅に過ぎない取組に陥ることは必定です。
一方、仮に貴社が、強度や振動、熱変形その他様々な原因で、客先が困っている課題を、貴社が備えたCAE技術を駆使して設計開発した、貴社部品で解消できる実力を備えていたら如何でしょう。製品(商品)開発力が低下してきている昨今の製造業の多くは、挙って貴社にラブコールを送ってくるはずです。
恐らく社長は、このような最終形をイメージしているのだと思いますが、この実力はCAEと言う道具を駆使できるだけで備わる筈もなく、それぞれの製品(商品)のあるべき姿を十分に承知して、的確に設計案に落とし込める力が無ければ不可能です。
要するに、CAE解析技術者をいくら育てても、その技術者が、客先の求める設計的スキルを持って、客先が求める問題解決に寄与できなければ、相談相手にはとてもなり得ず、精々便利屋扱いされるのが落ちと言うことです。
まずは上記のような要件を備えた(役割を果たせる)人材の確保と、育成ができるか否かがポイントとなり、CAEは、あくまでもその人材が駆使する、強力な武器の一つと言う位置づけになります。
さて私へのご質問のお答えですが、以下に箇条書き致します。
@これまで私どもが同様な育成作業に費やした実績期間(あるレベル以上の人材に対してと言う条件付きで)
A育成に費やす費用(育成する人数には関係なく、私共が費やす手間で申し受けます)
Bツール導入に費やす費用(ソフト・ハード・操作教育受講)
C確保すべき人材