CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

製造業としての固有技術や継承技術のない企業でのフロントローディング設計は無理・・・中国からの問い合わせ



■質問■

<前略>

貴社のご高名を漏れ聞きお問い合わせをさせて頂きます。

現在弊社が技術指導を行っております中国の大手重工メーカ(建設機械などが主力)から、製品開発の短期間化と品質向上を目的としたフロントローディング設計技術確立のための支援依頼があります。

弊社は、国内大手企業を定年退職したベテラン設計者などを中心に、中国系企業に向けての様々な技術指導を展開しており、様々な技術分野のベテランエンジニアを大量に抱えているのですが、生憎フロントローディング設計という大きな切り口で、体系立てて指導できる人材は見あたりません。そこで貴社にお問い合わせさせて頂いた次第です。

先方の希望としては、期間一年で人材育成も含めたフロントローディング設計技術の確保を望んでおり、この技術を取得することでコマツなど競合する日本メーカを凌駕できるブランドの確立を(当面は中国国内、将来的には世界的に)狙っております。

通訳や資料類の中国語翻訳は弊社で受け持たせて頂く前提で、貴社にご支援頂きますことは可能でしょうか。又その際の費用は如何ほどでしょうか。

<後略>

■回答■

まず大前提を申し上げます。

フロントローディング設計手法の確立とは、それぞれの製造業が持つ固有技術や継承技術を的確且つ効率よく活用して、設計途上で都度解決してゆかなければならない様々な問題点や懸念事項に対して、漏れや誤りを犯すこと無く、最大効率且つ最高品質での製品(商品)開発へと結びつけて行く取組です。

ですから固有技術や継承技術が乏しい製造業では、この手法を確立しようにも、その根底となる技術の裏付けがないと言うことになり、結果として机上の空論的な手法の確立で終わることになります(よほどの例外がない限り)。ある意味無い物ねだりの取組と言えるでしょう。

一方今貴社が中国でビジネスとされている様な、我が国製造業で結果として浮かばれることなく定年退職を迎えたベテランエンジニア達の、恨みにも似た感情を巧く利用して、彼らの持つ固有技術を中国企業の若者達に伝授するような、ある意味我が国にとっての技術流出がこの20年来行われて参りました。余談ですが、私の同業の技術士の中にも中国通いをして生計を立てている方もおられます。

そして貴社を通してのお問い合わせですので、当然先方の中国企業は、上記したと同類のノウハウ伝授を前提にしたお問い合わせだと理解致します。

確かに私の手元には、過去フロントローディング設計体制を確立してきた、数十社の固有技術や継承技術の集大成された様々な資料がございます。しかしこれらは、私の知的財産ではなく、それぞれのクライアントに帰属する知的財産です(拾い出し、体系化した部分には私の知的財産も含まれておりますが、相応の対価を頂きすべてクライアントに提供してきた物と理解しております)。

ですから、技術士としての法的な制約や、技術コンサルタントとしての信義上も、これらのノウハウを第三者に提供することは叶いません。

と言うことは、仮に私共がお問い合わせ頂いた中国企業をご支援申し上げるにしても、我が国製造業がそれぞれ会得した知的財産を一切提供することなく、彼らが持つ固有技術や継承技術(ほとんど無いと理解しますが)をベースにフロントローディング設計手法を取得頂くことになります。

これでも良ければお手伝い申し上げることは吝かではありませんが、建設機械をその製品とされている企業でしたら、私の経験上一年での手法取得など絶対無理だと断言できます。恐らく5年かかっても彼らが期待するであろうラインに到達することは、到底無理と考えます。

費用的には、詳細は別途見積もらせて頂きますが、旅費・交通費等を除き、一日(7時間以内の拘束)あたり150万円程度を見込んでください。弊社事務所〜目的地までの移動時間も拘束時間に含み、私共の国内銀行口座に請求金額全額を前払いを頂くことを条件と致します。間に貴社が入るのでしたら、貴社から請求金額全額を前払いでお振り込みいただくことで構いません。

尚望むべくは、私の他のスケジュールとの兼ね合いで長期間に渡ったり頻繁に行き来する中国出張はご容赦願います。もしこのような可能性がある場合には、先方の関係者達に来日頂き、貴社が用意した場所を使いご支援申し上げる形態が取れますとベターと考えます。