CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

設計思考展開を用いた徹底したFS(フィジビリティースタディー)実施が、設計出戻り組の最も効果的な活用になる



■質問■

<前略>

弊社でもご多分に漏れず大幅な売り上げ低下に陥っており、市場が回復するまでの我慢と全社一丸で耐え凌ごうとしております。幸い現経営層、主要株主から、「一人の社員も犠牲にすることなく皆で我慢を分かち合いこの危機を凌ごう」という強い意志表示がなされ、この一年社員一丸となって様々な取組を行っております。

その一環として、景気回復時の反転攻勢を狙って戦略的な製品開発を実現すべく、生産量が大幅低下した製造部門や売上量が大幅低下した営業部門より、設計部門出身のかつての設計者達が大挙して戻って参りました。

しかし、その殆どは設計部門から10年以上遠ざかっており、自らCADを操作して設計作業を行ってもらうのも効率が悪く、しかもそれぞれの部門で中心的な役割を果たして来られた方々ですので、必然的にその役割は、装置毎フェーズ毎の役割分担を持ってプロジェクトリーダ的な役割を努めてもらっております。

その結果、最前線で顧客に接してきた経験や、実際の物作り現場で苦労した物作りの経験が、各設計の基本的な考え方にしっかり織り込まれるようになって参りましたし、これらに起因する設計のやり直しが大幅に減少致しました。図らずもコンカレント設計が実現できてきたと言えるでしょう。

ところが一方、一家言を持った多くのベテラン勢が、それぞれの持論を実際に設計を行う中堅・若手設計者達にぶつけるため、船頭多くして船山を登るの例えのごとく、中堅・若手設計者のストレスには相当の物があります。

また彼らのストレスを少しでも和らげようと、セレモニー的なデザインレビューではなく、関係者が大会議室に集まり、実務的な次元で設計テーマをディスカッションする方法を模索しているのですが、どうしても声の大きい出戻り組の発言が大半を占め、中堅・若手設計者のストレス解消にはなかなか結びつきません。しかも多くの場合それらの議論は、論理的な道筋を外れ、発散してしまうケースも多く、かえって中堅・若手設計者のストレスが増してしまうケースも少なからずあります。

そこで先生にお教え頂きたいのですが、先生の設計思考展開の御著書を拝読致しますと、まさに私たちが悩んでいる部分を設計思考展開を用いて効果を上げておられる事例があげられておりますが、弊社のようなケースでもうまく適用できますでしょうか。

<後略>

■回答■

はい可能です。

私が支援さしあげるこのような取組をその設計初期段階では、FS(フィジビリティースタディ)と呼んでおります。そしてこの取組を行うに際して、ご質問のDPD(設計思考展開)を、その中核に置いて貰っております。なぜなら、参加者全てが同じ視点で、しかも論理的に物事を考える手助けを、画面に映し出されたDPD(設計思考展開)展開表が行ってくれるからです。

また詳細設計段階や試作検証段階に入ってからの各種設計検討は、ミニデザインレビューと呼び、まさに貴社でチャレンジされておられるような、実務的な次元で設計テーマをディスカッションする方法を取って貰っております。この際も画面に映し出されたDPD(設計思考展開)展開表を用いてディスカッションを進める方法を取って貰っております。

既に貴社では私の著書をお持ちのようですので、皆さんで内容を熟読頂ければDPD(設計思考展開)展開表作成は、直ぐにでも開始できると思いますので、早速チャレンジ下さい。

またその際、効率よく的確に展開作業を進めるには、それに参加する方々から巧く交通整理をしながら発言を引出、しかも論理立てて展開作業を導いてゆく司会者の役割が重要になります(拙著でも詳しく触れております)。このあたりは私の著書を参考にしながら工夫して進めてください。

なお、必要とあれば私が貴社に出向いて、効率よくDPD(設計思考展開)を進める方法や、司会者育成をご指導させて頂くことは吝かではございません。期間的には最低でも3日は必要です。費用的には旅費などを除き一日60万円程度見込んでください。

またFS(フィジビリティースタディ)やミニデザインレビューについては本コーナー各所で説明をしておりますので参照下さい。