CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

世の中の3次元CADブームとはいったい何だったのでしょうか?


■質問■

<前略>

先週末、先生のご指導に従い、基幹設計ツールとしての3次元CADは廃止し、2次元CADに戻すことに決定致しました。

弊社の業績悪化と先行きの景況不安に伴い、先生からのご指導を中断致しましてから既に2年になろうとしております。サブプライムが破綻する前から、事ある毎に先生には忠告されておりました輸出依存の体質を、結局改める事ができ無かった弊社では、昨秋以降生き残りをかけた、なりふり構わぬサバイバル態勢へと突入しております。

そしてその一環として取り組んだ、一切の聖域を排した徹底したムダの削減のなかで、先生からご提起頂いておりました「弊社製品と弊社文化で本当に3次元CADが必要か?」と言う問に対して、真剣に検証した結果が上記結論となった次第です。

現社長がかつて技術部門のトップとして決定した、完全3次元設計態勢実現の中止と、その際導入を行いましたC〇〇〇〇のライセンスの大幅削減(3ライセンスのみ残す)、さらには2次元CADのA〇〇〇〇を設計者人数分の新規ライセンス導入という思い切った方針変更です。

事情が事情故、当方としては首を洗っての決死の上申でしたが、3次元設計の立ち上がりの悪さと、C〇〇〇〇に掛かる膨大なランニングコストが、その大幅方針変更の決め手となりました。

さらに一昨年、先生にご指導頂きました設計思考展開手法が図らずも設計者達に定着し、着実にその効果を上げ始め、設計品質が日を追って向上しているという事実が、3次元CAD導入を強引に推進した現社長の心変わりを誘ったと考えております。

まさに先生から当時常に頂いておりました「設計品質の向上は道具の云々では無い、設計者達が如何に真剣に本当の設計ができるか否かにかかっている」「ましてや当社製品は、3次元・2次元CAD何れでも、CADが設計品質に与える影響は少ない」と言うお言葉の通りでありました。

詳しくは、先生の御都合次第ではありますが、連休前までにはご来社頂き、ご支援が中断しておりました間の弊社取組の進捗状況や、我々が考えております今後の取組の方向性の良否など、ご忌憚の無いご指摘を賜りたく考えており、その際に余すことなくご報告申し上げるつもりですので宜しくお願い申し上げます。

蛇足ですが、参考までにお聞かせ頂きたいのですが、業界団体の集まりなどでの雑談でも、3次元CADの評判は悪く、弊社の同業メーカ何処でも巧く活用できていない模様です。出入りの業者や客先などにもそれとなく投げかけるのですが、流れとして必須で3次元CADを使わざるを得ない様な話はあっても、その結果設計品質や設計効率に効果があったかという話になると、皆口を噤んでしまいます。

幅広く様々な業種の設計改革などを手がけておられる先生の場合には、それこそピンからキリまでの状況をご承知されておられるのではないかと思います。

で、本当に3次元CADは役に立っているのでしょうか。世の中の3次元CADブームとはいったい何だったのでしょうか?

<後略>

■回答■

まず詳しく現状をお聞きし、これからの進め方にご助言差し上げる件は、そちらのご都合の良い候補日を3日ほどお知らせ下さい。軒並み製造業が業績不振に陥っておりますので、当方のスケジュール的には割合余裕がございます。ですから、ご呈示頂きますご希望日に高い確率でお応えできると思います。

本当に3次元CADは役に立っているのでしょうか。世の中の3次元CADブームとはいったい何だったのでしょうか?の件

かねがね申しておりますように、私が知る限りでは、3次元CAD導入を目的としたような取組では、その殆どが失敗に終わっていると言っても過言ではないでしょう。

一方、設計の本質にまで踏み込んだ様々な取組の中で、その道具として初めて3次元CADが出てくるような、“あくまでも道具“の位置づけでの取組のケースでは、概ね巧くいっていると認識しております。当然私が関わってきたケースでは、“あくまでも道具“として巧く活用頂いております。

また私の承知する「3次元CADブーム」とは、あくまでも売る側の立場のITベンダーと、そこから広告料を稼ぎ出している工学情報誌が作り出した、あくまで商魂の上に咲いた“あだ花”と理解しております。