CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

暇になる今の内に若手設計者育成に注力して体質強化に結びつけたい



■質問■

<前略>

弊社としては、先生のご忠告なども参考にさせて頂き、一昨年の夏以降様々な厳戒態勢を続けていたのですが、その予測を超える大波に襲われております。その結果生産量の大幅低下のみならず、先々の市場動向が不透明なこともあり、開発計画の全面的な凍結と見直しを余儀なくされております。

特に現在策定されている中期レベルの開発計画は、サブプライム破綻以前の、異常とも言える米国市場に期待を持った計画のため、既に戦略として体を為さない物に陥ってしまいました。

そこでこの半年余り激論を重ねた結果、当面は開発計画の全面的凍結、景気回復の兆しと方向が読めるタイミングでの大幅見直しを行うことに決まりました。

我々製品開発部門としては、時々刻々と変わる為替レートや素材・部品調達環境の変化にタイムリーに対応し、常に最適なコストと品質環境を求める仕事が最大のミッションとして位置づけられました。現時点では充分先を見通す事が難しいこのミッションに対して、全面的に設計者を投入して、当座の急場を凌ごう(なるべく損失を軽微に抑える)という話で、設計者達は、これまで余り経験の無かった役割に戦々恐々としております。

一方、現有の設計者数を考えると、生産量が落ちたとは言っても止める訳にいかない量産維持業務を含め、全体約半分の頭数があれば充分だと見積もっております。そのため、余った工数をどのように生かすかが、最大の課題とされております。

一部経営者達からは、仕事量が減る分人員整理を計画しろなどという声も出ておりますが、バブル崩壊時の人員整理とその後苦労した人材不足の経験は、多くの経営層の記憶の根底にあり、二度と愚かな施策へとは走らないと思います。

そこで、私としては、暇となった今、3年前忙しさの余り途中で頓挫した、先生ご提案の設計力強化の取組に、余剰工数の大半を投入しようと考えておりますが、先生のご意見はいかがでしょうか。また、その際にもっとも効率的に目的を達成できるであろう、概略計画をご提案頂けますと助かります。

4年前にご提案頂いた計画は、当時の全く余裕を持てない忙しさを前提にした計画でしたので、取組内容そのものが全く変わってくると思いますので。

<後略>

■回答■

“追い込まれてやむを得えず”という動機かもしれませんが、やっとやる気になって頂けたようですね。しかし**さんが、貴社の本質的な問題点を本当にご理解頂いた上でのご決断か否かには、未だ懐疑的であります。なぜなら、言訳をされている「3年前の忙しさの余り途中で頓挫」そのものに大きな問題が沢山潜んでいたと思われるからです。

5年前に、貴社の製品開発部署の現状診断を行わせて頂き、貴社製品における原理原則の霧散と、若手設計者への技術継承の失敗、外注設計者依存による大幅な設計技術力の低下などを指摘させて頂きました。

そして早急に講じなければならない取組は、貴社製品を支える機械の原理原則と継承すべき固有技術を、それぞれの保有者たちから早急に引出し、体系化して共有化すべきだとご提案致しました。その上でそれぞれを活用した模擬設計を若手設計者達に行わせるなり、思い切って若手設計者達に権限と責任を与え、少々の失敗など見守りながら、彼らの体にその継承すべき技術を根付かせるべきだともご提案致しました。

しかし残念ながら、原理原則や継承すべき固有技術を引き出す場面で、これら作業があまりにも難解で遅々として取組が進まないことに音を上げ、途中で頓挫してしまう結果に終わったはずです。しかも難解だった理由や、遅々として取組が進まなかった理由が、本来なら貴社の誰かが必ず知っていなければならない対象機械の原理原則や、貴社として保有すべき固有技術が霧散してしまい、誰一人として論理的に追い込むことができなかったところに、その原因があったと私は理解しております。

なぜなら、図面には残って(間違いなく原理原則を把握しそれに則ったメカ構造だと思われる物、幾度もの試行錯誤を繰り返し辿り着いたと思われる高度な機構など)おり、製品ではしっかり継承できているのだけれど、誰も説明できる人間がいなかった構造や機構があまりにも多く、それらに対する私の突っ込みに皆が口を噤んでしまう場面があまりに多かったと記憶しております。

ですから3年前に行った取組が頓挫した理由には、確かに当時の開発ラッシュ故の忙しさもあったでしょうけれど、皆さんの不甲斐なさを頻繁に指摘する、私の容赦ない突っ込みに嫌気がさしたのだとも理解しております。

今後改めて設計力強化の取組をなさるのであれば、3年前に行った取組の巧く行かなかった理由を、**さん達自身が的確に理解した上での取組でないと、又同じ結末に陥る可能性が高いと考えます。それでは私どもが改めて貴社取組のご支援を申し上げることは叶いません。

なぜなら、「結果が出ようと出まいと、コンサル料金を頂けるならそれで良い」などとのいい加減なご支援は、私どもの創業以来一度も行ったことはございません。また3年前に取組の中断・仕切直しの申し出を行ったのも私どものはずです。ですから口はばったい事を申すようですが、3年前の取組に対する**さん達自身の総括を是非お願い致します。

また“もっとも効率的に目的を達成できるであろう、概略計画”は、貴社内での3年前の取組に対する総括が済んだところで持参致します。最悪貴社の総括が不十分で、私どもが責任持ってお手伝いできそうもない場合には、提案を持ち帰ることもあるかもしれませんが、それさえなければ、その席で提案させて頂きます。

貴社の総括結果、私ども自身で行う3年前の振り返り分析の結果などで変わる可能性はありますが、いま考えております内容は、概ね以下のような流れです。5年前の提案と基本的には余り変わって居らないはずです。暇を見越して追加した物がいくつかありますが。

提案概要

  1. ************************
  2. ************************
  3. ************************
  4. **申し訳ありませんが会員以外はご覧になれません***
  5. ************************
  6. ************************
  7. ************************