CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

不況期に稼げる商品はどうすれば開発できる?



■質問■

<前略>

先生の御著書やホームページを拝見すると「稼げる商品開発」が大きなキーワードになっていると思います。

確かに好況期、製品さえ作れば飛ぶように売れる時期ですと、競合製品に比べ幾ばくかの商品の優位性を持った製品なら、大いに稼ぐことが可能だったと思います。(そのコスト管理さえしっかりできていればと言う前提条件はつきますが。)

しかし昨今のように景気が急激に冷え込み、消費者の購買意欲が低下した今、稼げる商品開発がおいそれとできるとは思えません。

さらに今の状況を見ていると、十数年前に我が国が経験した底なしのデフレ現象が、世界中で起きるのではないかと危惧しております。特に始末の悪いのは、生き残りをかけた世界各国の製造業が、なりふり構わず原価を無視した低価格戦略に打って出るのではないかという恐れです。しかも各国政府の資金援助を受けながら・・

このような状況下で本当に先生が提唱されているようなビジネスモデルが成立するのでしょうか。

<後略>

■回答■

可能です。

十数年前のバブル崩壊時、それ以降も長く続いた不況期、私どものお手伝い申し上げる製造業の皆さんは、消費が最悪まで冷え込んだと言われた国内マーケットで、大幅にそのマーケットシェアーを伸ばし、しっかりと利益を稼ぎ出して参りました。

そして私が提唱する「稼げる商品開発」は、この時期に四苦八苦した体験を集大成したもので、苦境期こそ効果のある取組だと理解下さい。

十数年前のバブル崩壊期もそうでしたが、製造業の商品開発現場には、驚くほどのムダが潜んでおります。一部の製造業では、バブル崩壊後このムダの撲滅に力を注ぎ、今回の第二次世界大恐慌に際しても、悠然と構えておられる製造業が少なからず存在致します。

しかし殆どの製造業は、ムダの撲滅、即ち自らの体力強化に真剣に取り組むことも無く、ただ漫然と円安の恩恵を享受していた体たらくです。だからここに来て、あわててじたばたせざるを得ない状況に陥っているのだと私は観ております。

しかもサブプライムローンの破綻は、一部の経済専門家の間では、既に数年前からささやかれておりました。ですから頼りにしている米国マーケットが冷え込むことなど数年前から予測できたし、私でさえ3年以上前から米国景況には焦臭さがあると申していたはずです。

そして2007年の夏に破綻が現実のものとなりました。少なくともこの時点で、少し経済が分る方なら現在の状況は直ぐに予見できたはずです。にもかかわらず、一年もの間、これと言った積極的な対策を講ずるでもなく、今の状況を迎えていると思われる製造業の多さに、あきれ果てておる今日この頃です。

さて、では生き残りをかけ我が国製造業は、如何なる手だてを講ずるべきかですが、その答えは明白で、「不況期にも徹底的に稼げる商品開発態勢」を早急に確立して、ワールドワイドマーケットで勝ち抜いてゆくしか無いと考えます。即ち、圧倒的な商品力差を持った商品を、ワールドワイドマーケットにタイミング良く投入し、徹底して売り抜き稼ぎ抜くことです。

仮に今回の不況が第二次世界大恐慌だったとしても、マーケットが全く無くなる事は、世界各国が徹底した保護主義に走らない限りあり得ません。精々30%ダウン、最悪でも50%ダウン程度のマーケット縮小でしょう。保護主義の問題は、第一次世界大恐慌(昭和の大恐慌)の教訓から、少なくとも資本主義の長い歴史を持つ国々では、ロシアで既に始まっているような露骨に目に見える形では取らないでしょう(米国には少々不安がありますが)。

そうしたら結論は明白で、狙うべきは、ワールドワイドマーケットにおける、自社マーケットシェアーの倍増・三倍増です。要するにマーケットボリュームがたとえ半減しても、自社のマーケットシェアーを倍増・三倍増できれば、適正コストで市場供給されている商品である限り、利益を増やすことが叶います。そして結果として一人勝ちでもやむを得ないと思います。各国の競合製造業から脱落者が生ずる事などに気を掛けている暇など無いはずです。

ただこれを漫然と、しかも販売力や資金力に依存した形でやりすぎると、当然保護主義の問題が生じて参ります。市場からはじき出される製造業を抱える各国が、その雇用維持や国家としての威信をかけて保護主義に走る可能性を排除できないからです。

しかしマーケットシェアーの拡大が、圧倒的な商品力差の結果生じたものであった場合には、各国も安易に保護主義に走れないはずです。なぜなら自国民が、圧倒的に商品力が優れた製品を、自由且つ適正価格で入手できない事になるからです。

一瞬にして情報が世界中を駆けめぐる現在、廉価で高品質・高性能な製品を、消費者の都合によらない理由で入手不可能にすることなどは、少なくとも統制経済の国家以外では、あり得ない事だと考えます。

また当然のこととして、ワールドワイドマーケットを席巻するためには、先に述べたムダの徹底排除とともに、自社の強みを徹底的に生かし切るための、徹底した商品品目やマーケットの取捨選択も必須です。その上で、先週も紹介致しました以下の取組を行うことで、この大恐慌を乗り切ることが叶うと私は考えております。

1 「不況期にも徹底的に稼げる商品開発態勢」を実現するため掲げるべき目標。

「全世界の顧客が求める商品(製品)を、的確に開発・生産・市場供給し、そこから適正利潤を得る活動を最大効率(商品の取捨選択・最短期間開発・開発のムダ撲滅・垂直量産立上・品質問題撲滅など)で遂行できる実力を身につけ、平成23年度以降には、平成19年度以前に出した最高の事業利益に対して、常に上回る事業利益を生み出せる態勢を実現する」

2 具体的な実施目標

  1. 全世界が不況に突入した現状で、その中でも本当に売れて稼げる商品を、全事業部の知恵を結集して探し出し、開発段階で絶対に振れを起こさない開発仕様に落とし込む事ができる態勢を目指す。
     
  2. 開発着手段階から徹底した製造コストの追い込みを行い、量産出荷時点で確実に利益の出せる構想設計を実現する。且つ開発の進行段階でも徹底したコストレビューを行い、確実に狙いを達成する。ワールドワイドレベルで今後の経済・生産・素材などの供給状況を的確に予測した、精度の高いコストレビュー力を実現し、確実に利益を生み出せる態勢を目指す。
     
  3. 開発着手段階から徹底した設計品質の確保を実現する。開発途上〜製造段階〜出荷販売後までの商品の全寿命間で起こるであろう問題点を漏れることなく予測して、全てを事前に潰し込む。開発段階でのムダ排除、物作り段階でのムダ排除、商品出荷後のムダ排除を徹底実現し、不況時代のコスト競争に耐えうる商品開発力を目指す。
     
  4. ワールドワイドレベルで今後の経済・消費・購買状況を的確に予測して、開発した商品が的確に販売できる仕組みを確立できる態勢を目指す。
     

尚これらの具体的な目標実現のためには、的確な各種施策がタイムリーで行える事が大前提になります。いくら優秀な人材が揃っていても、列記した取組を行ったことがない方々だけでは、私やこれまでご支援申し上げてきた先の皆さんが、十数年前に犯した同様な様々な誤りや遠回りを余儀なくされるでしょう。

確実に、滞りなく、最短且つ最大効率で「不況期にも徹底的に稼げる商品開発態勢」確立を成功させるには、手前味噌ですが、私どもがお手伝い申し上げることが、もっとも効果的であると考えます。開業以前から合わせると20年以上、各所で培った経験とノウハウを基に、私自身が実際に皆さんと一緒になって取り組んでゆく形のご支援を申し上げます。その結果、最短・最小コストで、誤りのない成果へと間違いなく到達頂きますので。