CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

雇用調整のリストラではなく本当の意味での体質強化のリストラを行いたい


■質問■

<前略>

貴ホームページにある企業力診断のご説明を拝見して問い合わせをさせて頂きます。

昨今は、弊社もご多分に漏れず派遣社員を中心にした雇用調整が始まっております。今期初めまでは、作れば飛ぶように売れていた製品が、全く売れなくなってしまった現状からもやむを得ない取組かと、世間の批判に首を竦めている状況です。

しかし、契約期間終了前の契約停止は許される事ではないと考えますが、雇用の調整弁として法律で制度的に認められた範囲で、契約満了に際して再契約を行わない事までをやり玉に挙げ、責め立てられるのは、正直戸惑いを感じている所でもあります。

余談ですが、単純労働者の雇用調整を、制度で許されている範囲内で、派遣労働者に対して行うことは、仮にこのような制度作りを一部産業界が求めた結果だとしても、批判されるべきは、日々経営努力を行っている製造業ではなく、このような制度を安易に法制化した政治であり行政の責任だと、責任転嫁された我々としては、不愉快きわまりない思いでおります。

さてこの度お問い合わせさせて頂いたのは、今後数字あわせしかできない弊社経営層から、正社員を対象にした、雇用調整(人員削減)の圧力が強くなってくるのではないかとの懸念を抱いております。それもバブル崩壊時と同様な、各部門毎一律2割削減等という、質の部分を全く配慮しない員数あわせだけの人員削減圧力です。

15年ほど前のバブル崩壊時には、このような人員削減の行い方だったため、多くの本当に必要な人材が嫌気をさして辞めてしまい、他人を陥れたり、他人の足を引っ張ったりする、自己保身の強いしかも役に立たない人だけ跋扈するような状況が私がいた部署では生じてしまいました。そしてこのような状態から回復するのには、10年近くの歳月を必要とし、やっと最近正常と思われる状態に戻ったばかりです。

私としては二度とこんな愚を犯してならないと考えているのですが、残念なことにバブル期以降弊社の経営中枢は、数字でしか物事が考えられないメンバーが主流を占め、長い目で観た経営戦略などは、全く許される環境にありません。しかも当時「首切り**」と陰口をたたかれた経営企画室長が、現社長です。

ですから、今回の不況でも15年前と変わらない員数あわせが強引に行われる事は必定と考え、先手を打った対策が急務だと考えております。

私の考えとしては、「雇用調整のリストラではなく本当の意味での体質強化のリストラを行いたい」と言う思いであり、経営から要求される員数は、体質強化の障害となるであろう可能性が高い者から人員削減対象にしてゆこうという考え方です。

本来なら、人員削減無く部門費の大幅削減などで、経営からの要求をはねつけることがベストと考えているのですが、最悪の場合には上記の選択を取らざるを得ないという考え方です。

そこで質問ですが、このようなリストラの手助けを貴社では行って頂けるのでしょうか。貴ホームページのニュアンスでは、人員削減のためのリストラへの荷担は、心よしとされない雰囲気が漂っておりますので。

<後略>

■回答■

まず結論から申します。

お問い合わせ頂いた@@さんが主導される取組になら、喜んでお手伝い申し上げます。しかし貴社経営層が主体になった取組の場合には、貴社経営層に対しての予備的なご支援を行わせて(当然有料で)頂いた後、本格的なご支援を申し上げるか否かを判断させて頂きます。

その理由は、お知らせ頂きました@@さんのお考えなら、単なる首切りだけのリストラに走ることは無いと判断できますので、@@さん主導の取組に対してなら躊躇無くお手伝いできます。しかし現経営層主導ですと、私の診断結果などが一人歩きし、恣意的な首切りの材料となることを強く懸念するからです。

さて、一流のエコノミスト達の経済の読みには足下にも及ばない私でさえ、サブプライムローンの崩壊が判った昨年夏時点には、充分読めていた今回の来るべくして来た状況にもかかわらず、我国製造業の動きは極めて鈍かったと感じます。早いところでも今年初めから、ほとんどは夏を過ぎてからやっと、締め付けに入り始めた体たらくです。はっきり言ってこの有様に私は、我国経済界の将来に強い失望を抱きました。

とは言っても、我国の製造業は、本当に世界に類を見ない実力を有しております(全てではありませんが、バブル崩壊以前から力を蓄え維持できている所、バブル崩壊で痛い目にあったが、それ以降急速に力を蓄えた所など)。

しかしマネーゲームに明け暮れた米国型経営に毒された輩や、クオータ毎に成果を要求する外資系投資家に汲々として、長いスパンでの企業戦略を立られない経営層がその実権を握っている現状では、折角の実力も発揮できない状況にあると理解しております。恐らく貴社もこの部類に入るのだと思います。

恐らく力のあるところは、これを機会に@@さん目論む、「雇用調整のリストラではなく本当の意味での体質強化のリストラ」を目論むはずです。大幅に生産が低下し恐らく製品(商品)開発競争も下火になるであろうこれからこそ、余剰の工数を活用した体質強化のチャンスだからです。

小さいことですと、忙しいときには無視されがちなムダ、非効率を徹底的に洗い出し、将来に向けての効率的な仕組み作りを行うチャンスです。

また、暇になると言うことは、業務全体の流れを改めて見直し、その業務の滞りを起こしている原因を的確に突き止め、それらに改善改革を行えるチャンスでもあります。

さらに恐らく多くの製造業でお座なりにされてきた、自分たちが開発・製造・販売する製品のあるべき姿を徹底的に追求し、よく売れて良く稼げる製品のあるべき姿を、暇になった全頭脳を集約し確立すべきです。そうすると、景気回復後の製品企画・開発に迷いが生ずることなく、フロントローディングに開発を進めることができるようになります。

まさに様々な取組を行うチャンスだと私は考えております。

参考に、様々な体質強化に際しての心構えを10箇条に纏めた資料を表1に示します。掲載資料ですと“設計改革”とありますが、設計改革に限らず@@さんが目指す全ての体質強化における心構えとご理解下さい。


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設計改革を成し遂げる鬼の十訓     有泉徹

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