<前略>
弊社の3D化も既に10年を過ぎ、新規に作成する部品図レベルでは100%3D化を実現することが叶いました。しかし一方、計画図段階での3D化には若干問題があり、手をこまねいている現実があります。
弊社設計部署もご多分に漏れず、40、50歳代のベテラン設計者達が設計の中枢を担っております。実際に彼らが日常的に直接CAD端末に向かって計画設計を行っているわけではありませんが、構想設計段階や開発ピーク時の重要部分の計画設計では、その多くが自ら設計作業を担ってくれております。
彼らの本音としては、「自分で図面を引いてしまった方が早いし面倒くさくない、昔と違って一日立ち通しで製図板に向かうわけでもないので」という所ですが、おかげで設計の質、設計の効率という面では、非常に大きな効果を出してくれております。
ところが彼らの殆どは「今更3Dを覚えるなど・・・・」と言うことで、その道具は使い慣れたマイクロCADAMです。ダッソーのCADAM買収でメンテナンスされなくなると言われ、3D化の加速化が叶うかと期待したのですが、XPにも対応がされ、彼らは未だにマイクロCADAMを使い慣れた道具として駆使しております。
本来自ら構想設計図や計画図を引く立場にない彼らが、設計業務の効率化のため、上記した作業を担ってくれており、しかも計り知れない効果を生んでくれているため、彼らに対して高圧的に「3Dを使え」とも言えず、今までずるずると現状容認を続けておりました。
一方一部には、成長著しい若手設計者達も少なくはなく、徐々に若手に代替わりを図ろうとするのですが、モデルチェンジや類似設計の際の計画図流用に問題が生じております。
3Dを用ている若手は、ベテラン勢の残した2D計画図を見ることなく、対象機種や装置の3D組み立て図をベースに、その構想設計や計画設計を始めます。2Dの部品図なら読めても、計画図などとても読解できない状態にすでになってしまっているからです。
方やベテラン勢は、ベースになる機種が3Dで計画設計がされたいた場合などは、部品図から計画図の下絵を描いた上で、計画設計を始めるような、極めて非効率な状況に陥っております。
そこでお教え頂きたいのですが、弊社の様なベテラン設計者に、彼らに負担を掛けることなく3D設計を行ってもらえるような方法はありませんでしょうか、他社成功事例も含めアドバイスを頂けますと幸いです。
<後略>
ございます。
と申すより、「3次元CAD設計体制を確立するためには、ベテラン勢も含めた全ての設計者が自ら3次元CADを用いる態勢にしないとだめだ」と私は長年唱え、実践をして参りました。
そしてその結論は、「設計者自らが3次元CADを用いるとは、必ずしも自らがオペレーションすることではない、今更3次元CADの操作を会得するには難のあるベテラン勢には、言われたとおりCAD操作を行うオペレータを与え、ベテラン勢の手の代わりにすればよい」です。
しかし一般的には、3次元CADの導入で、それまではまともな設計行為を行っていた、中堅・ベテランの設計者達が、自ら設計を行わなくなってしまっております。彼等には、3次元CADの操作を覚えさせるより、オペレータを与えた方が、よりスムーズに3次元CADに移行できるし、成果も上がりやすいだろうという、CAD導入推進者達の戦略が招いた弊害です。
2次元CADでは線を一本引くのにも考えながらその作業を進める必要がありました。そして2次元CADの時代に設計者を補助していた外注設計者達も、補助設計者ではあるが、それなりのメカ設計者である場合が殆どであったはずです。だから、自分の仕事を彼等に丸投げしても、致命的な設計不具合が生ずることもなく、その開発業務はそれなりに遂行できてきました。
ところが、粗製濫造された3次元CADオペレータは、それまでの外注設計者達とは異質な人たちです。どちらかと言えば、2次元CADの普及とともに減少していった、トレーサーと同類の役割です。様するに、設計という行為は行わず、指示された図形を綺麗に仕上げるだけの役割です。
一般に3次元CADオペレータは、3次元CADのオペレーションを教育はされるが、多くの場合、本当の意味での設計業務の教育は受けません。要するにCADのコマンドの使い方とモデリング手法を教育され、より短時間でより正確な3次元形状を作成できるスキルは身につけております。しかし、あらゆる工学知識と知恵を駆使して行う設計業務に対しては、素人だしそれ以上を彼等に期待すべきではないと言えるでしょう。
にもかかわらず、3次元CADオペレータを与えられた、中堅・ベテラン設計者達の多くは、本来なら3次元CADオペレーションだけを依存すべき設計の素人たちに、実質的な設計行為を結果として丸投げしている状態があります。この状態を指して私は“最近の設計者達は自ら設計を行わなくなってきた”と申しております。そしてこの状況は驚くほど多くの製造業で見受けられ、“役に立たない3次元CAD“を生む元凶の一つとなっております。
さらにこの拙さが、商品開発の質にも大きな影を落とし、その開発途上や量産開始後も、従来なら起こし得ないような様々な品質問題を、数多く生じさせている例を、これまで行った“現状診断”や“製造業力診断”で私は把握しております。
質の高い設計を実現するためには、その設計目的に対して、対象となる機械の原理原則を理解した上で、論理的且つ漏れなく“考える”“描く”“見る”“判断する”の思考行為を、手抜きすることなく緻密に繰り返すことが必須です。
このあたりまえの行為を、中堅・ベテラン設計者達が手抜きをして、実質的な設計行為を、設計の素人たちに丸投げしてしまったのでは、従来では起こし得ないような品質問題を生じても、不思議ではないことを会員諸氏は、容易に理解頂けるでしょう。
さて、では何を為すべきかですが、その答えは簡単です。設計者が外注設計者やオペレータに頼ることなく、自ら思考を巡らせて、手抜きをせずにその設計行為を一歩一歩着実に詰めてゆけば済むことです。本来設計者として行わなければならない設計業務を、愚直に行えばよいと言うことです。ここで手を抜くから様々な問題が生ずるのは、冷静に考えれば誰でも判るはずです。
ご質問のベテラン設計者達に3次元CADを用いてもらう上では、彼らに3次元CADを自ら操作させる必要があります。それでなければこれまで彼らが行ってきた、“考える”“描く”“見る”“判断する”の思考行為はできないはずです。ポンチ絵を描いてオペレータに指示を出す、時々画面を覗いて指さしで指示を出す3次元CADの用い方では、巧くありません。
とは言っても、3次元CADオペレーションを今更覚えるには難のあるベテラン設計者達にまで、CADのコマンドを覚えさせ、CADオペレーションやモデリング操作をさせろとは申しません。そして上記した結論となるわけです。
私が支援している各製造業の多くでは、図1に示すような***パソコンに********、********、*************************環境を用意してもらっております。そしてこの環境下で、ベテラン設計者が***************************様な方法を用いております。
これも私が言う“設計者自らが3次元CADを操作している”範疇と考えております。ただし設計作業中には、設計者がCAD画面の前から離れることは厳禁、と言う条件を付けた上でのことですが。