CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

短期間でフロントローディング設計体制を実現するには?
過去に実績は?



■質問■

私どもの部署における本年度の実行計画テーマは、「製品開発のフロントローディング化を実現して、設計の手戻りを撲滅する」です。そして連休明け以降、本テーマを実現すべく、幹部メンバーを中心に議論を積み重ねて参りましたが、なかなか“これだ!”という施策に突き詰めることができないでおります。

フロントローディング、すなわち前倒しで問題点を把握して先手先手を打って事前に問題解決を行い、後に問題を先送りしない取組と頭では分って居るのですが、実際の設計アプローチの中で如何なる手段でこのような取組を行うかという部分で、幹部達の考え方がどうしても統一できません。

例えば手戻りの原因を設計変更通知一軒一軒追ってみたのですが、明らかなケアレスミスを除外した残りの殆どが、担当設計者の配慮不足や物作りに対する無知に起因する物でした。

一方設計変更通知には現れていないのですが、製品開発期間を長引かせている原因には、先生が各所で述べておられます、“作って”“壊して”“考えよう”的な取組が大きく起因している事が把握できており、幹部メンバーもこれらには異論はないところです。

しかし対策をどのように行うかの方法論になったとき、「設計者の教育が基本だ」「デザインレビューを徹底し、先生が提唱されているミニデザインレビューを取り入れるべきだ」「標準化を徹底すべきだ」「製造を巻き込んだコンカレントエンジニアリングが必要だ」などと各論が飛び交い、収拾がつきません。

またいずれの方法をとったとしても、とても今期中に成果を出せるようなツボにはまった方法とは思えず、一同途方に暮れている有様です。

そこで先生に質問ですが、弊社のようなケースの場合どのような取組がベストな取組なのでしょうか。また過去先生が手がけられた案件で、一年以内にフロントローディング化を成し遂げた事例がございますでしょうか。

■回答■

まず大前提をお話ししてからご質問にお答え致します。

私どもが提唱致しますフロントローディング設計は、設計初期段階すなわち開発の着手時点から、その製品(商品)が叶えなければならない、あらゆる側面からの問題点を徹底して拾い出し、その一つづつを徹底的に潰し込んでゆく取組です。その結果、試作評価段階を一発でクリアーし、量産立ち上げを一発で立ち上げ(垂直立ち上げ)、出荷後にはよく売れ・良く稼げ且つ品質問題を一切起こさない商品開発を実現する取組です。

そしてこの考え方を実現するために、開発着手段階での“フィジビリティースタディー”、構想設計段階での“完全予測型設計”“コンカレント設計”“設計知識の徹底共有化”等の取組が行われ、さらに量産出荷段階まで、上記以外の様々な取組も含め、弛まない先手を打った取組が行われなければなりません。

上記した考え方、様々な取組、どれ一つ取っても簡単な取組ではありません。いずれも大手製造業の優秀なメンバー達でさえ手こずる取組です。ですからフロントローディング設計をゼロから取組むとした場合、生半可な取組では絶対に実現不可能なテーマであることをまず理解すべきと考えます。

そこでご質問への回答ですが、まず「過去先生が手がけられた案件で、一年以内にフロントローディング化を成し遂げた事例がございますでしょうか?」は、YESです。

私がフロントローディング設計実現例としてあげている、B社さんの例がこれにあたります。しかも3ヶ月足らずで、そのパイロットプロジェクトを成功させております。


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図1 B社におけるフロントローディング設計の導入成果

しかしこのケースはあくまでも例外的なケースです。予測型設計を行う上で、B社さんが、その取組着手時点で極めて高いポテンシャルにあり、またパイロットプロジェクトを担う事ができる優秀なメンバーがそろっていた事が、この短期間成功事例に結びついております。このため、何処の製造業でもこの例に倣うことができるかというと、「恐らく無理だろう」と私は考えます。

続いて最初の質問の「弊社のようなケースの場合どのような取組がベストな取組なのでしょうか?」は、貴社とこれまで全く接触が無く、貴社の事情を全く承知しておらない当方としては、お答えしようがありません。

列記して頂いた幹部の皆さんからの案は、いずれの取組もフロントローディング設計実現のためには必須の取組と考えますが、それらにメリハリを付けることなく、同列で実施する事には賛同致しかねます。また一般には、いずれの取組も取捨選択すべきものでは無いと考えますし、たとえ数年掛かろうとも地道に一つ一つ物にしてゆくべき取組だと考えます。

下記致します“現状診断”を行わせて頂かないと断言はできませんが、恐らく**さんが期待される“ツボにはまった画期的取組”など無いと思いますし、そんな甘い考えで“製品開発のフロントローディング化を実現”などとぶち挙げないでください。一度実行計画に打ち出してしまうと、ご自身は元より、その後任者もしばらくは、“フロントローディング化”を改めて打ち出すことが、できなくなるのではないですか?

さて、私が申します“現状診断”とは、これまで私どもが様々な製造業様で、フロントローディング設計実現のための支援を申し上げた際に、必ずその時点での対象企業の現状を把握する診断を実施させて頂いております。

ご依頼企業の製品開発における様々な問題点の把握と、改革・改善を行う際のポテンシャル把握がその最大の目的です。これらが把握できない状態で、最適な改革・改善計画の策定など到底不可能だからです。

そしてその上で、それぞれの製造業様に適した改革案を提示し、最短でその計画を実現する取組のご支援を行う流れです。

貴社でも私どもの“現状診断”を受診されることをお勧め致します。おそらくそれが、皆さんのテーマ実現のための最短コースと考えますので。