CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

3D CADを導入してしばらくたつが一向に設計の質が上がらない?


■質問■

<前略>

弊社では3D CADを導入してすでに8年になります。販社のコンサルの薦めもあり、若手設計者や派遣設計者を中心に強制的に3D設計を推し進めた結果、設計に用いるツールという意味では、ほぼ100%の3D化が実現できました。

しかし一方3D化の最大の目的である設計品質の向上については、思うように進んでくれません。3D導入開始当時計測した設計変更通知書の枚数が減るわけでもなく、開発期間も短縮を要求するのですが、以前に比べて大幅に開発期間が伸びただけにとどまらず、一つあたりの開発に費やす設計工数も増加の傾向にあります。

これでは大枚を叩いて導入した3DCADの効果を享受するどころか、導入を推進した私たちの責任問題も取りざたされる始末です。

弊社が3DCAD導入を検討していた当時、貴殿を筆頭に様々な方々や雑誌などが、3Dの効果をアピールしていたと思います。弊社に3Dを販売した販社の**は、貴殿の成功事例を提案書に織り込んで、その効果を弊社上層部や我々にアピールし、バラ色の夢を抱かせてくれました。しかし現実は甘い物ではなく、その現状は上記のような始末です。

販社の**には、貴殿を同行して「本当に世の中では3Dが設計の質を向上させているのか」「本当に生産性を向上することに役立っているのか」を具体的事例(メーカ名・部署など)を示して説明させろと申しているのですが、貴殿から色よい返事をもらえないとの一点張りで、話が進みません。

そこで質問ですが、貴殿は当時販社の**に3D導入展開の指導を行っていたそうですが、その販社のコンサル達が行った弊社のような結果に対して、貴殿としての道義的責任は感じないのですか。

もし道義的な責任を感じるなら、弊社の現時点における苦境に対して何らかの保証があってしかるべきと考えますが、いかがですか。

又本当に3Dは設計の生産性向上や設計品質の向上に役に立っているのでしょうか、証拠を示してお答え下さい。

<後略>

■回答■

まず私どもは、これまで貴社に3次元CADを販売した**とのビジネス上でのつきあいは一切ございません。また**のコンサル達(恐らくコンサルまがい)に、3次元CAD導入展開の指導などを行ったこともありません。さらにビジネス以外の場面でも、3次元CAD導入展開に関する何らかの相談や質問も受けたこともございません。

唯一考えられる可能性としては、無記名の3次元CAD活用に関する掲示板などで私がアドバイスした相手に身元を偽った**のコンサルが紛れていた可能性は否定できませんが、このような場面では、体系立てたアドバイスなどは行っておりません。

不可解なのは、何故私どもの成功事例が**が貴社に提出した提案書に織り込まれているかです。著作権上の資料の利用許可願いを**から受けたことも一度もありませんので、私どもの主催のセミナーかこれまで私どもが商談を進めた客先などで配付した資料を、**が不正入手の上利用したとしか思えません。

私どもがコンピュータやCAD販社の講演会などで基調講演する際などには、雑誌などに発表した記事をリメークした物を配布しており、営業資料とし3次元CAD導入の効果をアピールするツールとしては不適なはずです。

さらに、そもそも**が販売し貴社が導入されたCADを、私どもとして積極推奨したことはこれまでに一度もなく、そのような営業場面で、何故私どもの名前が一人歩きをしているかが狐につままれた思いでおります。

ですから当然のことといえますが、**より貴社に同行してくれなどという打診も一度も受けておりません。

ということで、貴社がおっしゃられる私どもの“道義的責任”は一切感じておりませんし、今後私どもが無償で貴社に対して何らかのアクションを起こすつもりは一切ございません。正直「言いがかりを付けないでほしい」というところが私どもの偽らざる気持ちです。

又本当に、3次元CADが設計の生産性向上や設計品質の向上に役に立っていることを、証拠を示してお答えする必要も義務も無いと考えます。

この件に関しては、「私が**など知らないと言っている」と、**に対して申してみてはいかがですか?それでも**が白を切るようでしたら、私の名誉のためにも貴社において**と三者面談を行うことはやぶさかではございません。当然当日訪問のためのコンサル費(50万)及び旅費(交通・宿泊・日当)などは、前払いで貴社から申し受けることが条件ですが。





さて、貴社の苦境の原因は概ね見当がつきます。私の読みが間違っておらなければ、典型的な3次元CAD導入失敗パターンに陥っていると思います。

3次元CADはあくまでも道具です。たかが設計を行うための道具にしか過ぎません。いくらその道具の使い方をマスターしても、モデリングテクニックを覚えても、それぞれの3次元CADが持つ不具合をさける技を身につけても、PDMなどの周辺システムに金を掛けても、設計の質が上がるわけありません。

そして設計の質が上がらない限り、設計業務の生産性を大幅に向上させることは不可能なはずです。(私どもは16年前の開業以来一貫してこのように申しております。)

恐らく販社**の売り文句だったと思いますが、3次元CADを導入したら設計の質が高まる、コンカレント設計ができるようになる、設計の生産性を向上できると言う考えは大きな間違いです。

自社の設計の質が低い原因は何か?自社でコンカレントな開発が叶わないのは何故か?自社の製品開発がスムーズに進まない原因は何か?など自社が抱える設計回りや、製品開発プロセスにおける問題点を洗いざらい洗い出すことがまず肝要です。

そして洗い出されたまずい点に、悪さ度合いや緊急度毎に重み付けをして、優先順位をつけその悪いところを洗いざらい改めて行かない限り、設計品質の向上や、設計の生産性向上、さらには開発期間の最短化、稼げる商品(製品)開発へとは至れないはずです。そして3次元CADは、これらの改革を行ってゆく上での一つの便利な道具にしか過ぎません。

私どもは、私どもがこれまでお手伝いを申し上げた先では、この様な取組を“現状診断”と呼び、その着手時点で必ず実施をさせて頂いて参りました。貴社でも現状の苦境を脱するには、私どもの「現状診断」を受診されることをお勧め致します。

正確なところは一度打合せをさせて頂かないと何とも申せませんが、貴社HPなどで拝見する貴社の規模と扱い商品ですと、恐らく1500万、3ヶ月程度で実施できると思います。ご検討下さい。

ところで貴社の方々の中には、私の著書や雑誌の連載などをお読み頂いたり、私の講演をお聞きになられた方は一人もおらないのですか?

私の著書を良く読んで頂けておれば、恐らく貴社は今の苦境に陥らずに済んだでしょう。巧く行かなくても今ほどひどい状況ではなかったはずです。



ウエブ会員の方は2008年04月28日掲載の「3次元CADで本当に設計業務の合理化や高品質化が図れるのか?」も参照下さい。