本年1月5日に掲載した、「異なる事業用途のCADを無理に統一する必要はない」で、設計業務の都合(質・効率の維持向上)を置き去りにしたCAD統合化に対する警鐘を鳴らした。しかし掲載直後は、常時閲覧者とおぼしきアクセス先からのアクセスのみで、私自身警鐘を鳴らしたことさえ忘れかけていた。
ところが3月に入ったころから、本記事へのアクセスが鰻登りで増え、多い日には100件を超えるアクセスが行われるようになっていた。
弊社担当者からアクセス状況異変の報告を受け、アクセスログをチェックしてみると、我が国を代表する蒼々たる製造業のIPアドレスからで、しかも特定の数十社からの集中したアクセスが目立つ。
一般インターネットプロバイダーからの、本ページへのアクセスも3月に入り急増している状況があり、そのアクセス時間帯などから察するに、恐らく、帰宅後改めて本ページを確認している方々が少なからず居ることが想定できる。
さて本題だが、このような状況から結論に結びつけるのは、時期尚早かもしれないが、少なくない我が国製造業において今、これまでそれぞれの事業単位で独自に進められてきた、3次元CADを始めとする設計IT支援ツールの整理統合化を図ろうとする動きが、起きているのではないかと推察できる。
では何故このような動きが起きているのかを考察してみる。恐らくその結論は、これまで10年余りに渡って投資してきた、3次元CADを始めとする様々な設計IT支援ツールが、その目論見に反して、十分な投資対効果を出せていない所にあると推定できる。
この状況は、既に160件を超えた弊社が行う商品(製品)開発部署における現状の問題点を炙り出す“現状診断”や、商品(製品)開発力や実現力を評価する“製造業力診断”の結果からも明らかで、その多くの製造業で、全く投資対効果を生み出せていないと言っても過言ではない状況が、把握できている。
そしてその原因の殆どは、何が拙くて商品(製品)開発力が上がらないのか、効率が上がらないのかを、真剣に把握しようともせず、またその拙さにどの様な対処を行うべきかの詰めもまともに行わずして、3次元CAD導入などを敢行した結果起こった失策である。
見方を変えると、CAD販社などのお先棒を担ぐ、一部工学情報誌の誇大記事に踊らされ、「道具を入れれば何とかなる」という、インフラ至上主義が招いた失態であるとも言える。
そしてその失敗に、多くの製造業が気付いてきた結果生まれてきた動きの一つが、CAD統合化の動きであると私は理解するが、しかしだからといって設計業務の都合(質・効率の維持向上)を置き去りにしたCAD統合化は頂けないし、承伏しかねる。
この動きは1月5日の記事でも述べたが、設計の本質を忘れた極めて愚かな取組だ。“角を矯めて牛を殺す“結果に終わる危険性が極めて高いと考えるからである。
このような愚策を考えるのは、”設計とは何ぞや“を知らない、集中統合管理型で育ったシステム屋か、新しい販路拡張を目論むCAD販社の手先しかあるまい。