CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

3次元CADやCAEを導入して積極展開したのですがフロントローディングにならない


■質問■

弊社はご存じのように先生が独立された15年前当時から、3次元CADの導入やCAEの活用推進を行って参りました。特にこの10年は、とにかく末端までこれらの技術を活用できるように、繰り返しの教育や勉強会などを行い、手前味噌ですが活用技術という面では、恐らく我が国でもトップクラスの活用技術を持つに至ったと思います。特にPro/EからSWへの入れ替え(先生のアドバイスに従い)などの荒技も行って参りました。

しかし以前から先生にはご指摘頂いていたのですが、これらの技術が設計の効率を上げる、開発期間を短縮する、設計の品質を上げると言う面で見たときには必ずしもはかばかしい状態ではありません。時にこの2〜3年、無償のクレーム対策を行わなければならない品質問題を続出して、事業収益に極めて悪い影響を与えております。

このような状態を受け、この4月から新しく事業部長に就任した@@(先生とも面識があると思います)が、まず最初に我々に発した言葉が「この20年CADやCAEに膨大な費用と工数を投入してきたが、その費用対効果を明確に数字で示して持ってこい」「猶予は3年与える、むこう3年間で何を行わなければならないか、その結果得られる成果は何かを、具体的な数字で示せ」でした。常々我々の取組に冷ややかな態度で接してきた@@らしい要求だと思います。

一方@@は先生のお考えを信奉させて頂いている様で、機械設計の連載は基より、先生のお書きになられている著書は全て読破している様です(机の脇にもこれ見よがしに並べてありますので)。

そして我々に対して上の厳しい要求を下すに際しても、具体的に「先生にお手伝いをお願いしろ」とは申しませんが、先生の著書をパラパラめくりながらでしたので、明らかにご相談申し上げろと言うことを暗に示唆しているものと理解しております。

そこでご相談ですが、近々ご来社頂き今後の進め方などをお打ち合わせ頂きたく、宜しくお願い申し上げます。

■回答■

大変ご無沙汰させて頂いております。大分前に私が予見した通りの状況に陥っているようですね。そして@@さんは、事の本質を十分に見定めて居られるようです。しかし**さん達のこの20年を全く否定しかねない問題指摘は、ぐっと腹の中に収めている状況と理解致しました。事業部長の立場としては当然の事だと思います。

その代わりに外部の私を使い、このあたりの問題点を洗いざらい洗い出させ、徹底した仕切直しを目論んで居られると思います。九分九厘間違いはないと思います。

そこで思い起こして欲しいのですが、以前**さん達とけんか別れに近い状態になったときに、私から発した問題指摘が幾つもあったと思います。恐らく今日の状況に陥ったと言うことは、そこで指摘された問題の多く(若しくは殆ど)に対して、**さん達は手を打ってこなかったのではないでしょうか。

その問題の多くは、貴社における商品開発アプローチ及びそれを具現化する設計展開の部分に関しての問題点だったはずです。要するに、フロントローディング設計を実現するためには、道具の活用など3番目・4番目いやそれ以下で必要な話で、このあたりを先ずはしっかり押さえなければならないと、口を酸っぱくして申したはずです。

とにかく先ずは、「商品企画段階から具体的な設計作業に入るまでの、緻密で精度高いデータに基づいた詰めを実現できる仕組み作りがまず最優先で必要ですよ」。さらに続いて、「具体的な設計作業に入ってからは、全体から各担当分を担う設計者達が、如何に緻密且つ理詰めに、問題を先送りすることなく、問題点を見逃すことなく、それぞれが担当する部分をより効率よく進められるか」ですよ。このためには「機械の原理原則に基づいた論理的な設計の詰めが必須であり、それに応えられる、仕組みと設計者の資質が必須で求められます」よ。と言った指摘をさせて頂いたはずです。

確かにいずれにおいても、CADやCAEはこれらを実現するための強力な支援ツールにはなりますが、あくまでも道具でしかありません。そこのところが、**さん達には十分にご理解頂けなかったと思います。詳しくは、私の一連の著者をお読み頂きたいのですが、あくまでも主役は設計者達で、これらを駆使する設計者達の能力と仕事の進め方で、フロントローディング設計の成否は決まります。極端な話CADやCAEの道具の種類などは、何でも良いとも言えます(あるレベル以上ならなどという但し書きは要りますが)。

しかしまだあの当時私も、DPD(設計思考展開)のような手法を提唱しておりませんでしたので、**さん達には、これらの問題をクリアーする具体的な実績ある術を十分にご提案できなかった経緯はあります。このあたりが十分な説得力を持てなかった原因と、反省しております。

しかしあれから10年、現在は一連の著者をお読み頂けたら解りますように、十分に実績を積み重ねた考え方と手法が揃いました。先ずは私がおじゃまさせて頂く前に、@@さんがお持ちの、私の一連の著者を、一切の先入観を捨ててお読み直し下さい。

それから今後の進め方を、ディスカッションさせて頂きたいと思いますので。