CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

2006年、年頭所感(前編)

“喉元過ぎれば熱さも忘れ”では負け組転落が必定!


このメッセージは、過去私の現状診断を受けたにもかかわらず、診断結果を受け入れて頂けなかった皆さん、改革への取組がスタートできなかった皆さん、改革への取組が途中で頓挫せざるを得なかった皆さんに対するメッセージです。


また私の数々の無理難題に応え改革を遂行できた皆さんも、改めて原点を見つめ直する意味でお読み頂きたい。


さらに。これまで弊社と接触がなかった製造業の皆さんも、自分たちが21世紀を勝ち抜くことが出来る製造業になろうと思うなら、本メッセージをぜひ参考にして頂きたい。



日刊工業新聞社が本日(1月4日)発表した06年度産業天気図によれば、自動車・自動車部品・産業機械・通信機器など機械系の製造業は軒並み“晴れ”の業種が並び、それ以外も、一部例外的な耐震構造偽造問題の余波を受けたマンション業界、長引くデフレ経済の重圧から脱しきれないスーパー業界などを除き、悪くても“曇り”と予測される状況にある。

バブル崩壊以来、経済全体から見れば何度かの薄日の状況はあったが、製造業にとっては、実質的な不況状態にあった我が国の経済が、好況に転ずる兆しが明らかになったととっても間違いなかろう。

一方、バブル崩壊とほぼ時を同じくして独立開業した弊社は、21世紀を勝ち組企業として生き残ろうとする数多くの製造業と、その商品開発業務改革や設計業務改革、さらには“稼げる事業改革”への取組を行ってきた。

そしてそれぞれで展開した改革への道筋は、対象となる製造業が得意とする商品の特性により二つの方向性を持っていた。

前者は、内需型商品を得意とし、その売り上げの7割以上を内需に依存する製造業の場合だ。このケースでは、他に先駆けた外れのない技術の仕込み、的確なマーケットインと最短期間を実現できる商品開発力の強化、並の人材も一線戦力化出来る仕組み作り、量産垂直立ち上げ生産を可能とする真のコンカレント開発等の、徹底した体力強化と態勢組織のスリム化による、製造業力強化を行った。その結果向上した、製造業力により、バブル崩壊以来、急激に冷え込みデフレ化した国内マーケットを競合他社に先手々を打って勝ち抜く戦略だ。

後者は、ワールドワイド展開のビジネスを行っている製造業の場合だ。製造業力強化という面では、基本は前者と同じだが、数多くのターゲットに対してそれぞれをフォーカスした商品開発が最大効率で叶う開発力や、国内市場よりさらに厳しい競合先を席巻できる圧倒的な商品力、ワールドワイドマーケットに対して的確に無駄なく商品を供給できる供給力、マザー工場と各所に展開する生産拠点の一糸乱れぬ連携などが戦略的にはさらに追加される。全体的に見渡せば未だ成長基調にある、ワールドワイドマーケットだ。可能性は未だ無限にある。圧倒的な商品力と供給力を持って、狙いを定めたマーケットを徹底席巻する取組である。

そして、このような戦略を持ち改革を成し遂げた製造業達が、本日発表された景況における“晴れ”の状況を生み出していると私自身は勝手に自負している。改革を或レベルにまで成し遂げた製造業には、追い風が吹く状況が生まれつつあるのであろう。

一方、それぞれの業種に分類される全ての製造業に、満遍なく“晴れ”の状況があるかと言えば、私の知る限り“NO”と言える状況が実態である。元々高い製造業力を持ち、改革など必要としない製造業は別格として、その他の問題を山ほど抱え改革にも踏み切れない様な製造業には、今後生き残る術は既に無いと思われる。

かつて高度成長の時代には、敵失とも言える米国やヨーロッパ製造業の衰退が、我が国製造業の海外進出を支え、それに伴い著しく成長した国内経済が、内需産業を支え、急激に我が国の製造業を成長させた。ワールドワイドで見たとき、当たる相手が余りにも弱いため、問題を抱えた部類に入る一部我が国製造業でも、それなりに優位な戦いが出来た。メイドインジャパンだけでも商売になった時代があったはずだ。

ところが現在、ワールドワイドマーケットで見ると、中国を筆頭に韓国など東アジア勢が、かつて世界市場を席巻した我が国製造業に、取って代わっている部分も少なくはない。

我が国の製造業を、凌駕する商品開発力や品質力を、彼等は身につけてきた。ハイアール然り、レノボ然り、ヒュンダイ然り、サムソン然りである。

彼等は、ありとあらゆる手段を講じて、先行する我が国製造業に追いつけ追い越せの取組を積極的に行ってきた。例えば、日本での開発拠点を作り、バブル崩壊後、犬猫のように大手製造業を切り捨てられたベテラン技術者達の雇用の受け皿になり、彼等が持つ“暗黙知”をすっかり手に入れた例、バブル崩壊のあおりで倒産した我が国製造業を丸ごと手にいれ、固有技術をしっかり物にした例など数え上げたら枚挙に暇がない。

さらにこの十数年、大手製造業を虐げられ退職したベテランエンジニア達が、大挙してこれらの企業に技術顧問等で入り込んでいる事は、周知の事実であろう。国内では満足に収入を得られない“技術士”達も大挙して、“技術指導”に出向いている。さらには土日のアルバイトとばかり、現役のベテランエンジニア達も大挙して、これらの企業への“技術指導”に出向いている事実さえもある。

余談だが、私は独立開業以来、あらゆる面で危険というリスクを避けるために、極力海外に出ることを控えてきた。このため成田などに足を踏み入れることはほとんど無いのだが、関西空港の国際線ロビーだけは度々通過する。関西空港での国内線発着時、国際線ロビー用のタクシー乗降車場が空いていて、お願いしているタクシーが着けやすい為である。開港のころはそれほどでも無かったが、最近では多い月には数回此処を通過する。

そして金曜日や日曜日の夕刻、この関西国際空港には、私の顔を見た瞬間に、あわてて踵を返して逃げ去る人たちがいる。関西から中京地区に在住する大手企業に勤務するベテランエンジニア達だ。指折り数えてみたが、これまでに既に10人を優に超える方々に遭遇した。私が気づかなかった人も相当数いるだろうから、半端な数字ではない。 本題に戻り、先に挙げた我が国製造業を追い上げる、東アジア勢は、かつて高度成長時代に、我々が欧米企業から学び取った以上に、輪をかけて貪欲に我が国製造業が持つ固有技術や暗黙知を取得している。さらに、例に挙げた以上に強引な手を使っても、追いつけ追い越せに日々励んでいる実態がある。

上で、「それぞれの業種に分類される全ての製造業に、満遍なく“晴れ”の状況があるかと言えば、私の知る限り“NO”と言える状況が実態である。」と述べた。そして、その理由がここにある。

確かに我が国の景気回復を引っ張る各業界での勝ち組製造業は、その手綱さえ緩めなければ、ワールドワイドでその業界を引っ張ることが出来よう。しかし3番手以下に続く負け組予備軍及び負け組製造業が、勝ち組のおこぼれを貰えるかと言ったらそれは甘い。

恐らくワールドワイドマーケット、国内マーケットの如何に関わらず、東アジア勢が3番手4番手に付けてきて、我が国の負け組製造業は、永久に業界から弾き出される運命になるだろう。

既に白物家電は、中国製の独断場だ。大型の液晶パネルは、サムソンに追いまくれているはずだ。そしてその大型化と低価格化の波は、プラズマなど他のFDP事業にも大きな負の影響を与えている。そしてヒュンダイはワールドワイドでは、ホンダ、日産に次ぐ生産量を誇っている。何れにしろ、後を追ってくる東アジア勢はしたたかである。




<続く>