設計現場に設計者向けCAEを広めフロントローディング設計を実現したいのだが

質問


先生もご存じのように、弊社では長い間、幣部署(技術電算)による設計部署へのCAE活用展開を行ってきました。
かつてはCAEDSのマクロプログラムを用いた、いくつもの機能別解析システムを構築し、設計のレベルアップに大きく貢献してきました。
しかし残念ながらホストコンピュータの撤去や、CAEソフトのバージョンアップなどで、現在はこれらのシステムは継続できておりません。
一時期P法のラズナを導入し、設計者自身でCAEを使わせるように仕向けたのですがなかなか巧くゆきませんでした。
先生に以前ご講演をお願いした頃です。
その後も色々な模索を行ったのですが、やはり設計者には受け入れてもらえませんでした。
最近、以前先生が講演でおっしゃっておられた「設計者に御利益が無ければ、誰も好きこのんで面倒くさい道具を使うわけがない。」「KKDでやった方が、その瞬間はずっと楽に決まっているから」と言うお言葉を、最近特に身にしみて感じるようになっております。
年度が改まるにあたり、幣事業部のトップが替わり、かつてエース設計者として一世を風靡した者が、事業部長になることになりました。
一時彼がリーダを務めるいくつかのプロジェクトに私も参加していたこともあり、気の早いことに早速私に途轍もなく重い宿題を出されてしまいました。
先生のおっしゃられる「フロントローディング設計を導入し、開発期間・開発コストを半減したい」。
「ついては5月の連休明けまでに解析部隊の責任として、設計者達にどのような道具を与え、どのように教育すれば良いのかの提案を提出しろ」。と言う話です。
そこで私としては、DesignSpece等の3次元CADと連動した解析ツールを導入し、ツールの難しさを余り意識させずに、設計者に解析を知らずのうちに行えるような環境を作り上げようと考えております。
コンサル料をお支払いできる状態ではまだありませんが、ご相談に乗っていただけますと幸いです。
トップとの話の中でも先生の名前がでており、連休明けに行う私の提案が巧く採用してもらえれば、先生へのお願いも叶いそうですのでよろしくお願い致します。




回答



せっかく私どもへ仕事を頂けそうなお話を頂いたのですが、少し厳しいコメントをさせていただきます。(だからこその意味もありますが)

 まず皆さんの部署は、“迅速な商品開発”“合理的な商品開発”“最適な商品開発”と言う視点で見たとき、貴事業部の設計の皆さんに本当に貢献できてきましたか。
恐らく皆さんは「当然だ!」とお答えになるでしょうけれど、私にはその様には思えません。

 なぜならば、確か7年前の講演後、聴講者の皆さんから出た質問の内容がまずその根拠の一つ目です。
あの講演後の皆さんからのご質問が強く印象に残っており、**さんのこのメールを読んだ瞬間当時を思い出したくらいですので。
私の記憶違いでなければ、ベテランの現役設計者らしき方から、「断面パラメータだけ与えてやれば、即材に断面係数や断面二次モーメントが求められ、変形が応力がたちどころに求められる材料力学の公式の様に、CAEは使う物だろう」との質問がありました。
要するに「設計図面さえ渡せば、後はブラックボックスで結果が出てくれればよい」。
「メッシュ切りの作業はともかくとして、モデルのシンプル化や現象のシンプル化、的確な荷重・境界条件の把握と定義は、そのノウハウをプログラムとしてシステム組み込んであればよいことで、その作業を設計者に求めるのはおかしい」
「我々はそれを買ってきて使えばよいことで、なぜ解析対象物に働く物理現象の的確な把握や的確な解析モデル(形状・荷重・境界条件)の確認、現物との照合による解析モデルの妥当性確認などが何故必要確認なのか?」という趣旨の質問だったはずです。

また「CAEの答えは精度が悪くて使い物にならない」というご質問もありました。
よく問いただした結果一例としてあがった話は、FEM解析での最大主応力値と歪みゲージ試験の実測値の比較照合をしていたと言う物で、評価すべき応力の方向が異なるばかりで無く、解析モデルと実物との形状の大幅相違等があり、“でたらめの比較照合”をしていた結果引き起こされた、設計者の勝手な思いこみであることが判明した話でした。
このほかにもあきれるような設計者達の無理解と無知が、多くの質問の中から露見したはずです。

あれから7年の歳月が流れておりますので、未だに貴事業部の設計者達が当時と同じ状況とは思いません。
しかし7年前の状況は、明らかに**さん達の技術電算部署に大きな責任のある問題です。
皆さん自身が、シミュレーション技術を、設計にどのように役立ててゆけばよいのかが解っていなかった。
また設計者自身も、そのシミュレーションツールを、自分たちがどのように活用してゆけばよいかを、全く理解していなかった。
と言う紛れもない事実が、これらの質問になってきたわけです。
そして**さん達の責任は重大だと言うお話を、講演後たしかさせていただいたと思います。

要するにそれまでの皆さんのお仕事は、貴事業部の設計業務にとって、本質的なところで全く役に立っていなかった、と言っても過言では無い状況だったと言うことです。
この状況がどの程度変わりましたか?
私への講演依頼の目的には、このような状況打破もあったと思います。
大幅に状況は改善されましたか?

二つ目は“マクロプログラムを用いた、いくつもの機能別解析システムを構築し、設計のレベルアップに大きく貢献してきました。しかし残念ながらホストコンピュータの撤去や、CAEソフトのバージョンアップなどで、現在はこれらのシステムは継続できておりません。”の事実です。
もしこれらのシステムが設計ツールとして必要不可欠なら、“ホストコンピュータの撤去や、CAEソフトのバージョンアップ”程度の話で、保守を中断するはずがありません。
設計者達に使われずに埃をかぶっていたから、いつの間にか消滅していったのではありませんか?
本当に役立っていたら、保守を打ち切る時点で設計者達から厳しい非難の嵐があったはずです。

そして三つめは**さん自身のお言葉です。“「設計者に御利益が無ければ、誰も好きこのんで面倒くさい道具を使うわけがない。」「KKDでやった方が、その瞬間はずっと楽に決まっているから」と言うお言葉を、最近特に身にしみて感じるようになっております。
” と言うことは、**さん自身が、自分たちのこれまでしてきた仕事は、貴事業部の設計の皆さんに本当に貢献できてきたかどうかを、不安になっている証拠ともいえるでしょう。

おまけに4つ目として出された、新事業部長の皆さんに対する厳しい宿題です。
恐らく新事業部長は、問題のポイントをすでに把握されていると思います。
そして**さん達のこれまでの取り組みに問題があったと、感覚的に気づかれていると思います。
だからこそ、これからその仕切直しをどうするかを、**さん達に要求しているのだと思います。
単にツールの選択や教育のカリキュラムの問題ではないと思います。だからこそ、**さん自身もその様に感じられたので、私にご相談いただいたのでしょう?
恐らく、**さん達から納得のゆく提案が出されないときは、最悪は技術電算部署そのものの存続に関わるような話があるのではと、私には感じられます。

新事業部長と私どもは、直接の接触はありません。恐らく私の各所での講演をお聞きになられたり、著書類をしっかりお読みになられているのだと思います。
ですから私の唱える「フロントローディング設計を導入し、開発期間・開発コストを半減したい」と言うお言葉があるのだと思います。
そして私が唱える「フロントローディング設計」実現のプロセスは、ある意味、茨の道を皆さんに歩んでいただくプロセスでもあります。
恐らくこれを十分承知された上で発せられた、新事業部長からのお言葉だと思いますので。

さて、ご質問の“そこで私としては、DesignSpece等の3次元CADと連動した解析ツールを導入し、ツールの難しさを余り意識させずに、設計者に解析を知らずのうちに行えるような環境を作り上げようと考えております。”が簡単に実現できるかどうかですが、はっきり言って無理だと思います。
この7年で皆さんがその役割を十分認識して、それまでの取り組みのまずさを十分に反省して、私からの上記指摘が、全く的はずれな状況に変革できているのであれば、若干の可能性は残しております。
しかし、今後取り組もうとしている方向が“DesignSpece等の3次元CADと連動した解析ツールを導入し、ツールの難しさを余り意識させずに、設計者に解析を知らずのうちに行えるような環境を作り上げようと考えております”では「フロントローディング設計」の実現は到底無理でしょう。

**さんは、私の著書を何かお読みになられておりますか?押し売りするようですけれど、私の言う「フロントローディング設計」を全く理解しておられない。
だから「DesignSpece等の3次元CADと連動した解析ツールを導入し、ツールの難しさを余り意識させずに、設計者に解析を知らずのうちに行えるような環境を作り上げようと考えております」などの発言ができるのだと思います。言葉の揚げ足を取るようですみません。

「フロントローディング設計」の神髄は、設計初期段階での徹底した設計追い込みです。
これまではともすれば蔑ろにされてきた、構想設計段階における設計検討をCAEツールなどを駆使して徹底的に行おう。
そして試作確認段階で手戻り・後戻り・モグラたたきなどを一切起こさない、質の高い設計を成し遂げようと言う取り組みです。
そうすると、最もCAEツールを駆使するタイミングは、設計の初期段階の、個々の部品形状などは未だ十分に定まらない段階、だと言うことがお解り頂けるでしょう。
その様な場面で、“DesignSpece等の3次元CADと連動した解析ツール”をどのように活用するのですか?

かなり厳しい指摘になりました。もし**さんがこの取り組みに全力をあげて取り組まれるとおっしゃるのであれば、私も協力は惜しみません。
必ず成功できる方向にお手伝いを致します(ここ四年、各所で成功事例を次々と出しておりますので自信をもってお手伝いが叶います)。
とりあえずコンサル料はいりませんので、私の事務所においでになりませんか?
連休明けに新事業部長に提出する提案書作成のお手伝いを致しましょう。

PS;
ただとりあえず無料でお手伝いさせていただくにあたり、一つだけ交換条件があります。
このやりとりの内容を、私共のHP上や、私の著作物などで紹介させていただいても宜しいでしょうか?
当然貴社の機密に関わる内容や、貴社や**さんが特定される情報は一切除いた上ですが。