商品開発期間短縮の切り札"CAEの駆使"


私は常々、「コンカレント設計を担う設計者達は、優秀でなければならない」と言っている。しかし多くの製造業の設計現場で、コンカレント設計を担える、優秀な設計者の確保は、現実的には難しい面が沢山ある。まず、それでなくても人不足の設計部署では、設計者そのものの頭数が不足しており、いつも優秀な設計者は手一杯で、何とも手の打ちようがない等のためである。
 しかし、普段設計者達は行っている"無駄な時間"を良く見つめて欲しい。製品開発段階でのそれの原因は、そのほとんどが設計初期段階における、検討漏れや、手抜き(意図しない)等だ。言い方を変えると、問題の先送り、設計の先送りの"手抜き設計だ"。
私が大手製造業を中心に度々行う、現状診断などの結果でも、この辺りが大きな問題としてレポートされる場合が多い。
 優秀と言われる設計者達でさえ、そのKKD(感と経験と度胸)手法のためか、この様な問題を多発させている。そして、本来なら一段落するはずの試作出図直後から、あたふたと飛び回り、挙げ句の果ては、不完全燃焼での量産出図を余儀なくされている。何処の製造業でも、その呼び方こそ違え、"先送り"が起こした問題解決のため、いつも忙しい思いをしているのが、その実状である。
 常々私が唱え続けているように、CAEは巧く使ってやると、この"先送り"を大幅に減らすことが出来る。それは、物を作らない"仮想試作""仮想試験"で、徹底して、起こるであろう問題点を予測し、その対策を打つわけだ。確かにこの方法を取ると、設計の初期段階では、今までになかった、膨大な工数の増加も必要だ。
しかし、製品開発全体の工数でカウントすると、その増加工数を補っても、大きく余りある、試作出図後の生産性向上が達成できるメリットがある。


図1 CAE導入・活用による設計工数の変化

 その効果を、図1に示すが、本例は私が支援している、大手電気・情報機器系製造業での、4年前の成果である。
なお図1は設計関係者だけの工数でカウントしているが、試作出図後の工数低減には、その手直しや再試作・再試験のが大幅に減る分、加工組立工数、試験工数などの大幅な低減がある。それぞれ具体的な数字は私の守秘義務のため勘弁いただきたいが、設計工数低減が50%、そのほかの工数低減も20〜30%の大幅工数低減を実現している。当然その開発期間も大幅に減少し、現在では期間半減を実現している。