問題先送りの体質(作って、壊して、考えよう)改善が設計改革の始まり

質問

 弊社では昔から続く物を作ってしまった方が早い、壊してそれから考えればよいの体質が一向に抜けません。世の中も未だその状況なのでしょうか?

回答

 問題先送りの設計体質、すなわち設計対象物を"作って"、"壊して"、"考えよう"の体質は必ずしも貴社固有の問題ではありませんが、少なくとも勝ち組企業の中では大幅に少なくなった来た体質です。かつて家電製品や情報機器若しくは自動車規模の製品まで、その商品開発のスタイルはこの"作って"、"壊して"、"考えよう"が主流でした。
 設計の構想を即試作部品に反映し(作成し)従来機種に取り付け試して見る、原理設計(原理検討)等はその典型的なアプローチであったと思います。試作コストがそれほど必とされないこれらの業種では、"当たるか当たらないのか判らない解析的アプローチ"や、膨大な時間と手間が掛かる品質工学的アプローチで設計の初期段階で無駄な時間を費やすなどとても許される物ではなかったと思います。また迅速な試作部品を即座に作り出す熟練した試作工や協力会社が、この様なアプローチを底から支えておりました。
 しかし時代は変わり、"当たるか当たらないのか判らない解析的アプローチ"は、コンピュータ技術の進化に連動するように急激に育って参りました。巧く使ってやると、実際に物を作る以前に或る程度の実用試験の代りが、これらのツール用いて可能になってきました。
 また3次元CADに代表されるビジュアル設計支援ツールは、実際に物を作らなくてもあたかも実際の物があるようにその形状や構成をコンピュータ上に描き出します。このため形状的な検討や組み立て性、整備性検討作業をも2次元CADで行うに比べたら格段の差を持って可能にしております。
 一方、かつては"作って"、"壊して"、"考えよう"の文化を支えた、迅速な試作部品を即座に作り出す熟練した試作工や協力会社が、オイルショックからバブル崩壊の間に急激な減少傾向にあります。またかつては板金や機械加工品が主流であったこれらの業種が開発する製品を構成する部品は、その多くが樹脂の成形部品に取って代わられ、その部品試作アプローチも大きく様変わりしております。
 この様な時代の流れを受け多くの勝ち組製造業は、私共が"フロントローディング設計"と名付けた、前倒しで設計検討を十分行う商品開発体制、すなわちよく言われる"仮想試作""仮想試験"を十分に設計の初期段階で活用し十分な問題探索と、その対策を行った設計体制へと次々と切り替えつつあります。