パソコン3次元CADの市場動向(その1)
SoldWorksの躍進
一昨年・昨年、SoldWorksは大きく躍進した。その誕生当初、3次元CAD
は重いとの先入観から、際物扱いしていた私も、実際にその現物を見て、触れてそれま
での思いを新たにした。
さらにインテル、ペンティアムプロセッサー処理能力の驚異的向上は、それまでUN
IXにその処理を頼っていた本格技術用途のコンピュータ環境を、一気に廉価なパソコ
ン環境へ移行させる勢いを持っており、最初からパソコン上で動く3次元CADとして
開発されたSoldWorksは、正に時流にピッタリの製品でもあった。
私は当時、本ホームページにも有る"ATEC NEWS"に次のような一文を載せて
いる。
「直感的にはPro/ENGINEERとI−DEAS Masterの良い所取り
をした典型的市場適合型(米国市場での)商品であるとの印象をもった。
しかし商品の完成度は、本格的開発開始から2年足らずの間に作られた物としては、
部品設計部分を狙う3DCADとしては十分な仕上がり具合であると評価できる。
1996年にリリースされたPro/Enginerはリリース当初現在のSoli
dWorks程度のスペックだったと記憶するが、スタート時点での完成度としては後
発の分SolidWorksに軍配が上がる。
また新世代の3DCADとして次々と衣替えを行ったCV,EDS,SDRC等と比
べても製品の目的が絞り込まれている分当然と言えるのかもしれないが、スタート時点
での完成度としては目を見張るものがある。
価格的にはPTCのPro/JRやAutodeskのMechanicalDes
ktop等と競合することになろうが3DモデラーとしてのSolidWorksの機
能、操作性、2DCADとの連想性などは他を凌駕する可能性を秘めている。
ソリッドカーネルにはEDSのParasolidを採用し、ACISやDESIG
NBASEを採用しなかな物にならない他のPC系3DCADとの差別化を図っている。
Parasolid採用のメリットはGM等で本格的用途に使用される複雑な形状へ
の対応実績が第一に挙げられる。第2にParasolidを採用する他のプロダクト
との融合性が上げられ、特にUnigraphics、MSC/PATRAN等との緊
密な融合性が実現するとATEC NEWS 1995.10月号でご紹介した次世代
CADの第3勢力"EDS&MSC連合軍"の一翼をSolidWorksが担う可能性
をも秘めている。」
その後SolidWorksはCATIAのDassaultに買い取られたため
(1997年7月)、私が予測したParasolid勢の一翼を担う件は何とも言えな
くなって来たが、CATIAとの連携でCATIAのミドルからローエンドを担う3次
元CADの役割を持つ可能性をも秘めて来た。
しかし、買収時点からその危険性を語っているのだが、一歩方向を誤ると、Dass
aultによる飼い殺し的な施策も起こり得る可能性があり、(現実に最近Dassa
ult米国の上層部から、この恐れを裏付けるような発言が漏れ聞こえる)この辺りは
十分に注意が必要でり、SolidWorksの導入を行なう場合、いつそのような事
態が起きても速やかに対応できる体制をこうじておく必要がある。
とはいえ、この2〜3年にわたり驚異的売り上げの伸びを示し、急激にユーザーを増や
している実績の裏には、それなりの大きな理由があり、現時点でのパソコンをベースと
する3次元CAD勢の中では、頭一つ抜け出したトップランナーである事は紛れも無い
事実である。
SDRCなどが出す、ハイエンドCADの一部機能を除いたミドルレンジCADに比
べ、その商品が新しい分、枯れ方が足りないところはあるが、機能的からも、その周辺
アプリケーションの豊富さなども、既に十分引けを取らないレベルに達していると評価
できる。
次回以降に述べる他のミドルレンジと比較したときは、やはり一日の長がある製品と
言えよう。
1月20日SolidWorksジャパンの設立が発表されている。詳しくはこちらを。