コンカレントエンジニアリングを強力にバックアップするCAE
CAEはともすれば、専門特化した研究者たちのツールであり、一般設計者などは近寄り難いとの認識をされている向きがまだある。しかしCAEの中心的役割を果たすFEMが誕生したきっかけは、容易に試作や実験のできない原子力開発や航空宇宙開発などの仮想試作・仮想試験であり、当初からその目的は明確である。しかし初期のFEMなどはその考え方を理解するにも、それを使うにも、極めて高いハードルが各所にあった。
このため米国ではこの手の道具を専門的に使う専門職が生まれ、未だにその多くは彼らの手により処理される状況が続いている。我が国でも米国と余り状況は変わらないのだが、FEM到来直後から一部の設計者たちの手により、自分自身の設計ツールとしての活用が試みられてきた違いがある。
CAEの役割は本来の目的である"仮想試作""仮想試験"であることは異論のないところで、この辺りの効果は私を含め昔から各所で紹介がされている。しかしその紹介の多くは、設計上流段階での設計品質向上の部分に重点が置かれ、設計者の設計能力向上まで言及する事はほとんど無い。設計の上流段階を担う設計者達は、より良い設計を行なう為の思考と検証を繰り返し行なっている。しかしその検証はその設計者の経験や感に基づく場合が多く、これが後工程の試作段階での手戻りに繋がってくる。
この技術力アップをコンピュータテクノロジーを活用してあげて行こうと言うのがCAEの基本的考え方であり、この部分にのみ目が注がれるのがCAEの現状である。コンカレント設計を始めると、今まで設計者の頭の中だけで検討確認を行なってくれば良かったような事を、コンカレント設計に加わるほかのメンバーに的確に伝える必要性が生まれてくる。
又他のメンバーから投げかけられる設計変更要求に対しそれが技術的に飲めない場合、彼らに解る様、的確な表現で説明する義務が生まれてくる。この場面で、有功に活用できるのがCAEツールである事は言うまでもない。(続く)