３次元ＣＡＤ導入推進のノウハウ

ほとんどの製造業で、２次元ＣＡＤの定着には、本質的な苦労は余りしていないのが実情だと思います。 苦労は、それまでの設計業務ではほとんど縁のなかったコンピュータを設計者に触れさせるように仕向けたり、その膨大な予算を確保するところにあったと思います。２次元ＣＡＤの特性は、いつの間にかオフィス業務における必須のツールとして定着したワープロ（専用機、ソフト何れも）と同じと言えるでしょう。
ワープロの使い始めは、手書きで文章を作成した方が圧倒的に早かった人も多かったと思います。しかし公に用いる文章には、下書きと清書が一般的には不可欠であり、最終的な清書に入るまでに幾度となく修正が入る。これが手書きの時代は朱書きと清書の繰り返しであった訳です。これがワープロを用いると修正も簡単ですし、清書も要らない訳です。
２次元ＣＡＤも同様に、最初に描く図面は私自身の経験でも手書きのほうが圧倒的に早かった覚えがあります。しかし多くの製造業は既存図面の流用を頻繁に行っており、この部分での効率化の工夫は昔からされており、青焼き図面の上に鉛筆などで書き込んで修正箇所をトレーサーがなぞって図面化したり、第二原図にコピー紙た元図面の一部を修正液で消し新しい図面を作成したりと。この部分がＣＡＤを用いることにより簡単で図面の仕上がりも良いという利点がまず上げられます。
そのほか図面の仕上がりが正確で美しい、製図作業が奇麗で疲れない等々数え上げたらきりの無いほどの設計者たちに対するメリットがありました。ですから"ある日出社してみると、それまであった製図板がすべて撤去され、ＣＡＤ端末に変わっていた"などの荒業を行っても、操作を覚えるのもそれほど難 しくなかったこともあり、設計者たちの大きな抵抗も無く、多くの製造業で２次元ＣＡＤは定着して行きました。設計者にとって操作を覚える煩わしさよりも、その数倍ものメリットがＣＡＤにあることが分かっていたためです。
しかし３次元ＣＡＤはどうでしょう、操作を覚えるのは難しい、３次元ＣＡＤに合わせた設計方法を工夫しなければならない、３次元ＣＡＤを用いることで今までやらなかったような（手抜きしていた）所まで作図、検討をしなければならない、等々設計者にとって見えることはデメリットばかりです。
これでは当然積極的に使おうとはだれも思いませんし、これらのデメリットを知らずに使い始めた設計者がいてもすぐに気づき２次元ＣＡＤに戻ってしまうでしょう。私の著者をお読みいただいてもお解りいただけますよう、３次元ＣＡＤは、それを用いる企業や事業部もしくは設計部署には多きなメリットがあります。しかし今現役で活躍している設計者自身には全くと言ってメリットが無いことが２次元ＣＡＤと大きく異なるところです。
３次元ＣＡＤ導入推進の"こつ"は導入推進者自身がこのことを良く理解し、関係者に事実を正確に伝え、そのうえでそれでも３次元ＣＡＤは、企業として、事業部として多きなメリットがあることを、十分理解させるのがまず第一歩と考えます。当然その計画は、３〜５カ年計画をを最短とし、導入直後２年ほどの生産性低下をも十分配慮した無理の無い計画を立てる必要があります。