設計での解析技術活用が根付かない

質問 3次元CADでの設計はある程度軌道に乗りつつあるが、解析の部分がかなり遅れている。 考えられる原因としては
(1)解析をしていると周囲から遊んでいるように見られる
・・・現場のマネージャーの理解不足
・・・安直なツールしか採用していない
(2)解析サポート部門や高度な知識を有する人材がいない
この場合には中核技術者の集中教育以外方法はないのか?
回答

貴社の詳しい状況を把握してからでないと、的確なお答えは難しいとは思いますが、これまでに私共が経験して来た中で、現象面で貴社と近い状態に陥っていた例を思い浮かべてのお答えとさせていただきます。
最初に"中核技術者の集中教育以外方法はないのか?"の問いには"NO"と答えさ せていただきます。

まず"解析をしていると周囲から遊んでいるように見られる"件ですが、なぜこのような状況に陥っているかを明確に把握する必要があります。周りから指摘されるように"解析ツールを使っているつもりで、本当に遊んでいる"(設計の目的から外れ、独りよがりな、無意味な解析を行っている)場合は、何とも仕方が無く、問題外と切り捨てざるを得ません。
しかし、それ以外の場合には、現場のマネージャの理解不足と結論付ける前に、これまで解析技術の実用化の為にどのような施策を打ち、どのような成果を上げて来たかが大きなポイントになると思います。 私自身が20年以上前、自分の担当製品の設計にFEMを用いようとして四苦八苦していたときも、同じように回りから白い目で見られていたものです。しかし適用の成果が出始めると、当然のこととしてマネージャークラスはその効果を認め、私の担当以外の案件にも活用を試み、それらのための費用もある程度のまとまったものを使えるようになって来ました。
しかし、この成果に恩恵を受けない周りの設計者たちは、相変わらず「役に立たないコンピュータ遊びをしている」と陰口をたたいていたようです。
歴史的に成功体験を持つ設計部署ほど、新しい設計手法や設計ツールの導入に保守的であり、消極的です。その裏返しがご質問のような、若しくは私自身が体験したような、周囲からの"おもちゃで遊んでいる"的な発言につながってくる訳です。
さて、その対処方法ですが、発言の中心が、本当に力のある設計者であった場合は、この誤解の解消方法はあまり難しくはなく、とにかくCAEによる成功体験を彼らに見せつけるだけで十分かと思います。 しかし、力の無い設計者がこぞってこのような発言を行っている場合には、先の方法は、あまり効果的ではありません。かえって自分たちの立場を危うくする悪魔の道具が現れたとばかりに、理屈ではどうにもならない抵抗を行ってくる可能性が極めて高くなるでしょう。
ですからこのような場合には、トップダウン的な力を使い、有無も言わせず強引に押し進める施策と、着実にその成果を積み上げる、地道な努力を組み合わせた、戦略的アプローチが必須となって参ります。その具体的な方法については、それぞれの設計部署のおかれた環境や状況により異なって参りますので、詳しい状況を把握させて戴いたうえでのコメントとさせてください。

次に"解析サポート部門や高度な知識を有する人材がいない"点に触れます。
早急に解析技術の活用を立ち上げる必要性がある場合には、当然のこととして、これらの機能は必須な条件と言えるでしょう。しかしこれらの組織や人材は一朝一夕で育てたり、組織することは極めて難しい事とも言え、やはり現実的な手段を講ぜざるを得ないと思います。その一例は以下のようになります。

まず当面は、サポート部門及び人材を私共などの外部の力を活用戴きます。
同時に、中核技術者の集中教育をスタートさせてください。
その中から将来のサポート要員及び専門人材の候補を選出してください。
選出された者は、私共など外部支援者と協調行動を取って戴き、OJTによりその技術取得に努めて戴きます
順次自立の試みを行い、完全自立に結び付けてください