コンカレントエンジニアリングの実用化状況
コンカレントエンジニアリングが今ブームである。多くの製造業が何らかの形でその手法の取り込みを模索している。昨年7月に100社を越える製造業に私が行ったアンケート調査でも、その有効回答の1/3は、コンカレント設計への取り組みを、現在遂行中であるとの回答を寄せていただいた。
また3次元CAD販売会社や一部工業情報誌などは、さらに混迷の度を深める、我が国の製造業を取り巻く経済状況下において、コンカレントエンジニアリング実用化こそが、それを生き残る製造業の必須条件だと吹聴している。
しかし世の現実は如何に?一昨年の7月、私は日刊工業新聞社より「3次元CADによる設計の改革術」なる著書を出版した事もあり、昨年1年間で両手に余る大手製造業の3次元CAD活用状況やコンカレント設計、PDMなどの実用化状況を診断する機会があった。その結果は残念なことに、ほとんどの現状レベルは、"旨く使えている"と言うには程遠い所にあり、またそのまま年月を重ねれば"物になる状況でもない"との診断を下している.
何が悪くてそのような診断結果が出たかは、一義的には言い切れないが、平均的に言える点は、3次元CAD・コンカレント設計・PDM導入の目的が極めてあいまいな所であった。なぜこれらの手法や道具が必要で、それでどうしたいのかが不明確なまま、3次元CADを入れたら設計の品質が上がる、後工程で重複したデータ作成をしなくてよくなる等、近視眼的、CAD販売会社のセールストークをそのまま受け売りしたような導入目的が巾を利かしていたようである。
コンカレント設計に至っては、その歴史的経緯を知ろうともせず"この手法は80年台米国の先進的製造業が生み出した画期的な製品開発手法だ","だから我々も早急にこの手法を物にしなければワールドワイドの市場競争に敗退するだろう"等の、まさにCAD販売会社のセールストークをそのまま鵜呑みした計画の下、その手法の導入が試みられていた例もあり、そのほとんどの導入方法に思わずため息を漏らしたものであった。
このような状況を垣間見るに至り、過去6年以上にわたり、先進的大手製造業の方々と設計業務や製品開発業務の根本的生産性向上を目論み、この辺りの実用化や、その旨い使い方を模索して来た私は、その経験やノウハウを広く活用いただこうと、積極的な執筆活動や講演活動を展開している。
さて、このコンカレントエンジニアリングがどのような経緯で米国で誕生したか、またその誕生までに我が国の製造業がどのような関わりをそれに持っていたか、これからの我が国の製造業にとって本当にこの手法が役に立つ手法なのか、役に立つのはどのような製造業なのか等、この手法を導入するに当たって前以て知っておかなければならない点を十分理解して戴く必要がある。この辺りの詳しい話は追ってこのホームページで連載を始めようと思うが、当面すぐにとおっしゃる方は、日刊工業新聞社が発行しているCALS NEWSの昨年7月号から12月号にかけ私が連載を行っておりますのでご参照ください。
なおユーザー・会員の皆様でご興味ございます方はご連絡いただけましたらその写しを送らせていただきます。