<前略>
3次元CADの導入で設計工数が増加する問題にどう対処すればいいのでしょうか
<後略>
まず結論として、確りした3次元CADの導入を行った場合、トータルでの設計工数が増加する事はあり得ないと思います(その操作技術取得期間を除いて)。また仮に設計工数が増大するような3次元CAD導入では、設計の生産性向上、開発期間の短縮などの目的が達成できないことにもなり、最初から3次元CAD導入など行わない方が良いとの結論になると思います。
3次元CAD導入は、2次元CAD導入のときと同じような製図工数や流用図作図工数などでその効果を測っても意味がないことは、十分承知されていると思いますが、ともすれば目に見える所だけでその成果を測ろうとする傾向が一般的にあります。
またそのような効果の測り方をしている製造業のほとんどは、3次元CADのもつ本来の効果を知らずに、表面的効果や、CAD販社などから流される我が国の製造業とは掛け離れた情報を基にした、的外れな導入計画を行い、その結果成果が出ないと騒いでいる訳です。
3次元CADの導入目的は何ですか? 2次元を3次元に変えることですか?その目的は設計業務の生産性を上げることではないのですか?設計品質の向上を計ることではないのですか?手戻りのない設計力を付け製品開発期間の大幅短縮を図ることではなかったのですか?そうしたら3次元CADの導入効果はその目的に対して、その目的達成度合いがどうだったのかを測らなければ意味のないことでしょう?
ですからもし設計の上流段階での設計工数が3倍になっても、その目的に従い確りした導入を行えば、後工程の設計工数は大幅に減らす事ができ、かつ手戻りのない設計が実現できますので、開発期間は半減するでしょう。
当然総設計工数も間違いなく低減致します。これは大成功と言えることではないのでしょうか?また総設計工数が仮に増えたとしても、開発期間が半減すれば、その商品競争力及び製造、生産管理などの生産側大幅工数低減など諸々の効果が生まれ、企業全体から見たときは大きな成果を享受できること明白です。
一般的に3次元CAD及び各種コンピュータテクノロジーを駆使した高品質な製品開発を目論んだとき、当然設計上流段階での工数は大幅に増えます。
それは構想設計段階ではポンチ絵で済まし、強度・振動・熱などの性能・品質追い込みも行わず、ただKKDで設計を行い、試作・確認試験で膨大なNGを出し対処療法的にモグラ叩きアプローチを行って来たこれまでとは根本的に違う設計アプローチを目指しているのですから当然のことと言える訳です。
ここまで説明すれば、設計工数増加を云々することの恥ずかしさをお解りいただけるのではないでしょうか。
また、3次元CAD導入が設計の後工程の部署から提案される場合があります。3次元CADの導入により、設計の最上流段階の構想設計から最下流の生産設計段階までを共通の3次元モデルで一貫させようとする目論みです。その時、最下流の生産設計段階でのみ必要となる情報を誰が入れ込むかが問題になってきます。
多くの製造業でそれまでは、構想設計段階ではポンチ絵やラフ図面で大まかな構想を建て、計画図段階でも部品干渉が問題となりそうなコーナーフィレットや溶接ビードなどの加工や製造に関わる形状は作図しないことが一般的でした。時には金型製作に関わる自由曲面的形状でさえ3面図からの輪郭線指示のみで後は金型設計をする人が考えなさい的な図面が当たり前の製造業もありました。
現在の3次元CADブームの切っ掛けには、このような製造業で、例えば金型設計を行う部署はその生産性を上げるために何をすれば良いかと考えたとき、これまで3面図からの輪郭線指示を元に面張りを余儀なくさせられていた部分を、設計のもっと上流段階に行わせれば、その部分での自分たちの工数は減りかつ設計の意図伝達ミスによる設計不良も起こらないと目論んでいる場合などがありました。
しかし、先に上げたような企業全体としての効果や目的が明確にされ、共通の認識で関係者全てに理解されていない場合"こんなに設計工数が増える道具は使い物にならない"と設計の上流過程の人々から反発を受け、3次元CAD導入が暗礁に乗り上げる訳です。