CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所


製造業力診断

弊社が行う製造業力診断の基本的な考え方

私共が唱える“究極の製造業力を持った製造業”とは、製造業として、21世紀をそれぞれのビジネスの先頭を切って勝ち抜く事が出来る、強靱な体力を持った製造業を指す。

又私共が定量評価を行う具体的数値として指し示す“製造業力”とは、“究極の製造業力を持った製造業”を100点満点としたときに、それぞれが満点に対してどのレベルの強さにあるかを、定量的に指し示す指標である。そして、勝ち組負け組のボーダーラインを30点になるように振り分けてある。

一方、21世紀を勝ち抜く製造業に課せられた使命は、社会正義に反することなく、適正な利益を上げ、株主に適正な配当を行う事にある。当然、利益を上げるために身を粉にして働く従業員に対しても、応分の還元(分け前)がなされなければならない。また、企業活動を行って行く上で、協調関係にある社会への適正還元も忘れてはならない。そしてこれらの責務を各製造業が果たすためには、“旬でよく売れ稼げるる商品”を常に開発し続ける必要がある。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格の製品を、より短期間且つ低コストに開発できる実力を持ち、常に安定した商品開発と製品供給が叶うことが、製造業に求められる必須の要件であると私共は考えている。そしてその結果、我が国製造業が潤い、株主が潤い、従業員が潤い、関係者が潤い、国民全体が潤う構図が、我が国のあるべき姿であろう。

21世紀を勝ち抜ける強靱な体質を持った製造業に、それぞれの製造業が変革して行くためには、自身の現状を冷静に把握して、それを元に的確な改革計画に落としこむ必要がある。自分たちの事業体が現時点でどのレベルの実力を持っており、強みは何で弱みは何か?“究極の製造業力を持った製造業”に変革するには、何が課題となり、何が障害となるか?などをである。そして、私共が提唱する“製造業力診断”とは、まさにこの“何が”“何を”漏れなく明確にする事を目的としている。

弊社が行う製造業力診断は、以下に示す14項目に括られる診断評価項目について、それぞれを構成する細目項目での現状を、事業に関わるあらゆる部署のメンバーへのヒアリングによって、その事業部署が持つ問題点や実力値を把握する事がまずその基本となる。

続いて、実際に直近で行われた商品開発案件数件について、そのスタート時点からそれに関わった関係者達から、誰がどの様な意図でどの様な判断根拠で何を行いその結果どうなったと言う具合に、時系列を追ってつぶさにヒアリングを行って、対象事業が持つ問題点や実力値を把握する。事業に関わるあらゆる立場の人間に対してヒアリングを行うことにより、手前みそや嘘のヒアリング応答を許さない仕組みが講じてある。営業部門と開発部門、開発部門と物作り部門などは全く対極の発言を行うケースが多いからだ。

さらに、必要に応じて、商品開発の流れを通じて実際に残された資料やデータ、さらには関連現場観察などにより収集したデータを用いて、把握した問題点や実力値の妥当性の検証や、さらなる追い込みを行う。この段階では、必要に応じて販売店やエンドユーザーも補足ヒアリングの対象となる。

商品開発や事業経営に関わるあらゆる立場の人たちから、弊社が誇る卓越したヒアリングテクニックを用いて、あらゆる情報を引き出す事により、より精度の高い問題点の把握と、現状における実力値把握が可能となる。 ちなみに、弊社の持つ卓越したヒアリングテクニックや、ヒアリングポイントの選択方法、収集したデータの分析手法などは、弊社開業以来14年に渡り実施した、150件を超える“稼げる事業改革”を目的とした現状診断を通じて培った物で、容易に他者にまねできる代物ではない。

表1 弊社が行う製造業力において、製造業力を構成する基幹評価項目
@ 外れのない明確なビジョンと的確な戦略を掲げ円滑に事業を運営できる企画立案力と、計画遂行能力。あらゆる出来事に対して的確且つ最短に事業判断が下せる経営判断力と、組織を一枚岩で動かせる指揮力 事業経営力
A マーケット情報の的確な把握力 市場把握力
B 旬でよく売れ稼げる商品を短期間且つタイムリーに企画できる企画力 商品企画力
C 企画された商品を最大効率・最短且つ最高品質で開発できる実現力 開発実現力
D 開発された商品を原則滞りなく量産移行出来る垂直立ち上げ力 垂直立上力
E コンスタントに高品質かつミニマムコストでの生産を実現できる生産力 生産力
F 中期的には90円/ドルでも十分に利益を生める為替対応力 為替対応力
G 市場投入した商品を的確且つ最大限売り抜ける販売力 販売力
H 外れのない先行技術を的確に仕込める先行技術仕込み力 先行技術力
I 固有技術の的確な継承、暗黙知の的確な形式知化と共有化が図れるナレッジ力 ナレッジ力
J あらゆる難しい課題を的確に処理できる人材を確保育成出来る人材力 人材力
K リアルタイムであらゆる事業の進行状況(開発・生産・在庫・販売・収支・等)が把握できるITシステムの構築力とそれを駆使できる人材力 IT力
L あらゆる事業活動を円滑且つ最大効率・最高品質で成し遂げる事が可能な設備環境の整備と、それを駆使できる人材力及び構築できる資金力 設備力
M 他 その他

なお弊社が行う製造業力診断では、一般に企業力診断等で用いられる財務諸指標は、製造業力を構成する基幹評価項目としては単独では取り上げない。当然、列記した各“力”を評価する評価指針としては各所で用いるが。

何故なら、資本主義社会における民間企業に課せられた使命は、社会正義に反することなく、適正な利益を上げ、株主に適正な配当を行うこと。さらに利益を上げるために身を粉にして働く従業員に対しても、応分の還元を行うこと。さらに企業活動を行って行く上で、協調関係にある社会への適正還元を行うことであり、これを大前提にしているため、全ての“力”は事業利益に結びついていなければ、配当・応分還元の原資が生み出せない。このため各“力”のレベル評価を行うに際は、事業収益に如何に貢献できるかに重きを置いた評価を行う。よって弊社が行う製造業力診断では、敢えて財務諸指標だけを単独で取り上げた基幹評価項目はおかない。

弊社が唱える“究極の製造業力を持った製造業”になるためには、“旬でよく売れ稼げる商品”を常に開発し続け、圧倒的な商品力と価格競争力・販売力で、社会秩序を乱さない範囲で、それらの商品を売り続けることができる製造業に成長しなければならない。

理想論だがこの状態に至れば、財務諸指標を用いた収益性・生産性・安全性分析などは殆ど意味をなさなくなる。極めて健康な若者が念のため人間ドックに入って検診を受ける程度の意味しか持たないはずだ。

しかし人間ドックも血圧や血糖値は兎も角として、自覚症状の出ないガンの早期発見などには有効なので、決して財務諸指標を用いた収益性・生産性・安全性分析などを行わなくて良いと言うことではないし、各“力”を評価する重要の指標として用いられていると理解頂きたい。



製造業力診断の進め方

弊社が行う製造業力診断の流れは図1に示す流れになる。この流れは、従来から弊社が行ってきた“稼げる事業改革”を目的とした現状診断と基本的には同じだ。そしてこの流れには、弊社開業以来十数年に渡る取組の中で行われた、数々の試行錯誤の結果が織り込まれている。

1.予備打ち合わせ

診断を打診頂いた製造業に、弊社コンサルタントが出向き、事業責任者及び改革推進メンバーの方々に、弊社の自己紹介及び実績の紹介を行うと共に、診断対象事業の概要及び希望される診断の規模(対象とする商品範囲、部門範囲など)、期間、費用などをお聞きする。必要に応じて、実際の製品や開発現場・生産工場の視察も行う。

2.見積もり提示

予備打ち合わせで確認した項目に従い、弊社の推奨する診断内容での見積もり、希望費用でカバーできる範囲での見積もりなど、対象事業部署の希望に従った見積もり案を複数検討して提示する。

3.アウトライン診断の為のヒアリングシート作成

 弊社が保有するアウトライン診断の為の標準ヒアリングフォームに、予備打ち合わせで取得した情報を元にヒアリング項目の追加削除やヒアリング内容の変更などを行い、アウトライン診断の為のヒアリングシートを作成し、診断対象部署に前もって配布する。
  アウトライン診断は、対象事業部署のアウトラインを弊社コンサルタントが明確に把握して、本診断時において、“どの部署の誰に何をどの様な内容で聞き取るのかの判断”を行うための情報を取得する事が最大の目的となる。併せて、弊社コンサルタントがどの様な作戦で、対象事業部署の問題点を洗いざらい探り出すための作戦立案情報取得の目的もある。
  弊社が保有するアウトライン診断の為の標準ヒアリングフォームには、対象事業部署が抱える問題点を都度把握するためのチェックポイントが各所に仕込んであり、“どの部署の誰に何をどの様な内容で聞き取るのかを判断”は、このチェックポイントに対する弊社コンサルタントからのヒアリングに対して、対象事業部署の関係者が如何なる返答・対応を行うかで逐次判断をくだす。

4.アウトライン診断

 前もって配布したアウトライン診断の為のヒアリングシートに基づき、事業経営幹部及び事業改革推進者達にヒアリングを実施する。ヒアリングの内容は、経営層に対しては、経営層が把握している自事業部隊の問題点、それに対する自己分析結果、今後の方向性・戦略についてお聞きすると同時に、改革への思いなどを確認する。
  一方事業改革推進者には、アウトライン診断の主目的である“どの部署の誰に何をどの様な内容で聞き取るのかを判断”するための情報収集を目的としたヒアリングに専念する。このため、前持って配布したヒアリングシートでは十分な情報が得られないと、弊社コンサルタントが判断出来るときには、随時臨機応変にヒアリング内容を変更して、核心の情報収集に努める。
  弊社の診断においては、ヒアリングにあたって被ヒアリング対象者が、事前に何らかの資料作成を行う必要はない。弊社からヒアリングシートなどで前もって指示された、既に保有する図面や資料類などをヒアリングの席に持参するだけでよい。最近では、ヒアリングの席にプロジェクタとLAN接続されたパソコンを準備して貰い、必要情報を画面に映しながら、ヒアリング対応をして貰う場面が殆どになった。
  またヒアリングでは、その内容を全て2台のICレコーダーで録音することで、弊社コンサルタントは、矢継ぎ早の質問を被ヒアリング対象者に浴びせる方式を採るのが一般的である。
  これらには、まずヒアリング内容を一々メモする時間のムダを省く目的がある。さらに矢継ぎ早の質問にはもう少し大きな目的がある。意図した誤魔化し回答を防止する目的だ。一般に30分も矢継ぎ早の質問を続けられると、誤魔化し回答がどこかで辻褄が合わなくなってくるのが普通だからだ。
  実は、被ヒアリング対象者に事前に何らかの資料作成を行わせないのにも、誤魔化し回答を防ぐ目的が大きくある。前もって問題点を曖昧にするような作文資料が、論理の一貫性を持って作られ、その記憶を頭の中にたたき込んだ上でヒアリングに臨まれたのでは、百戦錬磨の弊社コンサルタントでも、“嘘”を見逃す危険性があるからだ。
  ちなみにICレコーダに録音されたヒアリング内容は、ヒアリングの区切り毎、弊社事務所に控えるスタッフ達の手元にEメール転送を行い、リアルタイムで書き落としの資料作成が始まる。
  アウトライン診断のまとめとして、ヒアリング対象とする直近開発機種(3〜10機種程度が一般的)、ヒアリング対象範囲、ヒアリングスケジュールの大まかな摺り合わせも行う。最終的にこれらを決定するのは、数回のやりとりの後、本診断を開始する直前になるのが一般的だが、お互いのスケジュールの都合や、前もって押さえておくべき留意点等の調整を此処では行う。

5.アウトライン診断結果の整理分析と

  事業経営幹部及び事業改革推進者達実施したヒアリング結果を整理分析し、本診断の為のヒアリングシートを作成すると共に、ヒアリングの作戦を練る。
  アウトライン診断で、そのヒアリング項目の各所に仕込んでおいたチェックポイントに対する、被ヒアリング者達の返答内容を精査して、問題点の内容と所在を仮定する。続いて仮定した問題点の詳細内容とその発生原因を追い込むための作戦を立案する。
  この仮定段階では、弊社がこれまで培った、150件を超える“稼げる事業改革”の為の現状診断で会得した情報やノウハウがフルに活用される。弊社のこれまでの経験では、問題が山積している製造業、少なからず問題のある製造業、問題を殆ど持たない製造業それぞれに幾つかのパターンがあり、アウトライン診断で把握した情報を、過去会得したこれらのパターンに重ね合わせると、アウトライン診断で把握出来た問題点の、数倍もの問題点を持っている可能性が見えてくる。
  さらに、アウトライン診断の最後に被診断部署と行った、ヒアリング対象とする直近開発機種(3〜10機種程度が一般的)やヒアリング対象範囲を基に、何時誰に何を聞くか、の検討を行う。この段階で必要な人に必要な話を聞けないような本診断スケジュールを組んでしまうと、本診断の追加ヒアリングが必要となり、弊社にとっては極めて非効率となるため、細心の注意を払い、この段階での追い込みを行う。当然このような状態に陥ったとき、被診断対象部署にも2度手間の不都合や、報告のタイミングが遅れるなどの迷惑をかけるため、可能な限りこのような状態に陥らないための努力を弊社では行っている。
  これらの検討の結果、実際の開発現場や生産工場の現場観察が必要と判断される場合や、販売店やエンドユーザーへのヒアリングが必要と判断される場合などは、追加診断の見積もりを作成すると共に、被診断対象部署窓口とスケジュールやヒアリング者手配などの調整を行う。
  一般にアウトライン診断で、弊社コンサルタントの網に掛かる問題点は、本診断で把握できる問題点の3割程度しかない。診断対象事業部署のアウトラインを弊社コンサルタントが把握することが、アウトライン診断の第一の目的だから当然のことだ。しかし、重大な問題点の殆どは、この段階で何らかの検出がなされるという弊社の実績もある。このため、この段階での詰めが甘いと、本診断段階で十分に問題点を引き出せない場面に陥ることもあり、この段階でのヒアリング結果分析は、極めて重要となる。

図3 調整が済んだ本診断スケジュールシートの例

6.本診断

 計画されたヒアリングスケジュールに従い、順次ヒアリングを実施して行く。
  商品企画担当者や設計担当者には、前段階で調整ピックアップした、ヒアリング対象開発機種について、その開発着手段階から量産安定時までの時系列を追って聞き取りを行う。その内容は、どの様な考え方で何を行い、その結果どうなった、そして何が起こった、起こった問題に対してどの様な手を打ち、その結果がどうなったか等、開発のプロセスを逐一聞き取る方法を取る。
  このヒアリングは、開発に関わったチームの主要メンバーを一同に集めて行うのが一般的だが、それまでに把握した状況や企業文化によっては、マネージャークラスと担当者クラスを別々にヒアリングしたり、年代別に3〜5グループに分けヒアリングすることもある。遠慮して発言しない、後で何かを言われるから発言しない等の状態を防ぐためだ。
  本診断でもアウトライン診断同様、ヒアリング内容は全て2台のICレコーダーに録音し、弊社コンサルタントは、被ヒアリング対象者に矢継ぎ早の質問を連発する。さらに被ヒアリング対象者達の応答に矛盾点や綻びを見つけたときには、その部分をさらに深く追求することで、問題の核心に迫る手段を講ずる。
  一般に弊社が行う本診断では、事前に渡すヒアリングシートの流れに従って、淡々とヒアリングが行われることは、滅多にない。被ヒアリング者とのやりとりの中で、臨機応変に質問を発し、被ヒアリング者に“事柄を作る”余裕を与えないためだ。
  診断で必要な情報は、“具体的に発生した事実”であり“そこで担当者達が何を考え何を行ったのか“が重要である。“作られた事柄”や、失敗を振り返っての新たな見解は不要である。当然、成功・失敗事象に対して、振り返り分析がしっかり出来ているか否かを測る目的で、それぞれの区切りでは、「今度同じような問題が起きた場合には、今度ならどうする」との質問は必ず行うが。
  このようにして、必ずしも事前に渡すヒアリングシートの流れにこだわらないヒアリングを行うが、結果としてはヒアリングシートの内容全てを網羅し、さらに問題有りと判断した部分では、それぞれを深く切り込んだヒアリングとなる事を絶えず心がけている。そして此処では、開業以来十数年に渡る現状診断で蓄積したノウハウ満載のヒアリングテクニックを駆使することになる。
  営業・生産などの開発部署以外のメンバーに対しては、診断のターゲットが商品開発部分中心の場合には、各部門毎1〜3時間、物作り側の生産性向上までを範疇に含む場合には、生産側各部門のヒアリングに3〜7時間は掛ける。さらに必要に応じて、工場などの現場観察(主要協力会社も含め)を設ける場合も少なくない。
  また診断の範疇に、販売力強化や営業戦略まで含む場合には、営業本社部門だけでなく、全世界・全国の営業出先や販売店などもヒアリングの対象にする。
  物作り側の生産性向上、販売力強化や営業戦略何れの場合でも、ワールドワイドで展開している事業部署に対する診断は、海外工場や海外営業拠点までをその対象にしないと、漏れのない問題点検出と言う視点では難がある。時には弊社コンサルタントが海外に出向く場合もないわけではないが、費用対効果という面から余りお奨めでない。このため、この様なケースでは、診断の日程に合わせて、海外出先のメンバーを帰国させるよう手配して貰うのが一般的だ。多くの場合、年1〜数回、事務連絡や会議のため帰国するケースが、多くの製造業では一般的だ。そこで、これらのタイミングを診断日程に合わせて貰い、彼等の帰国中に持つ時間の内、1〜3時間をヒアリングに充てて貰うやり方だ。
  これらの部門に対するヒアリング内容は、開発部門に対するそれとは若干異なる。ヒアリング対象機種の開発過程などに関わる内容は、全体時間のうちの四分の一程度に止まる。この部分では、専ら設計などの開発部署で聞き取った数々の事象に対する裏づけを、対極の立場にいるメンバーという立場(意識)を利用して、有効に取って行く作業が中心となる。
  そして、残りの時間の殆どは、それぞれの部署が行うルーチンワークの流れを、物の流れや伝票の流れ、人の動きなどに合わせて順次聴き取る方法が、弊社の場合一般的だ。そして、その流れの中で被ヒアリング対象者達が応える、弊社コンサルタントからの投げかけへの応答から、論理の矛盾点や、他部署との整合性が取れていない部分を目敏く検出して、深く突っ込んで聴き取り問題点把握に結びつける手法を用いている。
  この際弊社コンサルタントの頭の中には、開発部門に対する場合でも同じだが、事前に作戦立がなされている、仮定した問題点を一つ々検証して行くための、ヒアリング作戦が詰まっていることは言うまでもない。
  やはりこれらの場合も、事前に配布するヒアリングシートはあくまでも参考であり、その流れ通りヒアリングが進められることは滅多に無いことは、開発関連部門に対するヒアリングの場合と同様である。
  一連のヒアリングを通して、弊社コンサルタントは、コンサルタントの質問に答えるに際して用いた参考資料の提出を求める場合が多くある。「この資料のこの部分とこの部分をプリントアウトして・・」「この資料のデータファイルを・・」という具合だ。一件の診断で、A4の紙でプリントアウトしたら、厚さ50センチを超える資料を提出して頂くととは珍しくない。
  また本診断においては、弊社コンサルタントは、そのヒアリングの節目々で、ヒアリングで検出した重大な問題点の抄録を残している場合が多い。これは何処の製造業においても、しっかりした診断結果は、ヒアリング結果なり付随する資料を持ち帰って整理分析した後でないと出てこないことを承知していながら、ヒアリング終了時には、必ず「如何でした?どんな問題点があります?」と弊社コンサルタントに聞いてくるのが常だからである。このような要求に応えるため、ヒアリングが一段落したところで、事業経営幹部や事業改革推進者達に簡単な報告会をサービスするためである。
  弊社が行う“製造業力”診断は、この本診断の出来不出来でその結果の優劣が決まる。この段階で、的確な問題の洗い出しと原因究明のための情報収集が巧く出来なかった時には、情報を拾い漏らした部署に対して“再ヒアリング”を行う必要が出てきて、弊社にとっては極めて非効率であり、被診断対象部署にも2度手間の不都合や、報告のタイミングが遅れるなどの迷惑をかける。
  弊社が開業して本格的に“診断”業務を始めたころは、正直なところ“再ヒアリング”を行わなければならない羽目に陥ったケースも少なからずあった。しかし2000年以降の“診断”で“再ヒアリング”を行ったケースは、全く無かったと記憶する。このあたりは手前味噌だが、アウトライン診断から本診断に至るまでの用意周到に準備された作戦立てと、数多くの場数を踏んだことにより鍛えられた卓越したヒアリングテクニック、さらには弊社コンサルタントが持つ、実戦で鍛えられた極めて幅広く且つ深い工学知識(物作り知識)や経営知識が為せる技と自負している。

7.本診断結果整理

 アウトライン診断同様に、ヒアリングの区切り毎弊社事務所に控えるスタッフ達にEメール転送されたヒアリング録音データから書き落とされた書き落とし資料を用いて、診断結果の整理を行う。ヒアリングの書き落とし資料には、録音音声データのカウンターナンバーと、関係資料の資料番号を書き込む。
  録音音声データのカウンターナンバーの記入は、弊社スタッフ達が聴き取り困難で、的確に書き落としが出来ていない部分を、弊社コンサルタント自身が直接聞き直すことにより、書き落とし資料を正しく訂正する目的と、被ヒアリング対象者と弊社コンサルタントとのやりとりを聞き直すことにより、ヒアリング場面々での言葉に表れない、ニュアンスを聴き取る目的がある。特に重大かつ微妙な問題点ほど、このニュアンスが重要になる場合が多い。
  本ヒアリング時に提出を受けた関係資料類は、それぞれコード番号を付けてクリアーホルダに挟み、書類収納ボックスに分類して格納しておく。そして書き落とし資料には、この分類番号と書類コードを記入することにより、必要な場面で必要な資料をたちどころに検索できるようにしてある。さらに電子データで預かってきている資料は、書き落とし資料の対象箇所にハイパーリンクを設定することで、ワンクリックで画面を開くことが出来る様にしてあり、弊社コンサルタントの分析業務の効率を上げる手段が講じてある。
  その他この準備段階では、後に続く分析・診断作業をより効率よく行うために、数々の工夫が織り込まれた緻密な準備作業を行っているのだが、この辺りは弊社の重要なノウハウ事項に当たるので説明は割愛させて頂く。

8.ベンチマーク診断

  表1に示した14の基幹評価項目を、さらに細目まで展開した細目の評価項目に対して、表2に示す評価基準に従いヒアリング結果に対する評価点を付け、評価項目毎にそれぞれに付けた評価根拠を記述して行く(表3)。この診断部分で、被診断事業部署の強み、弱みの殆どは列記され、その度合いも判定される。
  細目の評価項目は、本診断の被ヒアリング者には特に伝えてないが、弊社コンサルタントは常にこの細目を念頭に置き、複数の被ヒアリング者に繰り返し同様の質問を、様々な切り口から投げかけるようにしている。
  ちなみに表3の評価点の欄には、診断対象事業部署以外に類似業種最高点と平均点の記入欄がある。本来ここには、“製造業力”診断を受診した、各製造業の評価点を基に算出された数字が入るのだが、“製造業力”診断は、未だスタートしたばかりのため、此処に記入すべきバックデータが残念ながら未だ揃っていない。
  一方弊社には、過去十数年に渡り各所で行ってきた“設計改革”“商品開発改革”“稼げる事業改革”などを目的とした150件を優に超える“現状診断”のデータが揃っている。
  このため当面は、“現状診断”で得られた情報を基に、改めて表2に示す評価基準で採点をやり直したデータを、この欄には用いることにする。その上で、“製造業力”診断の結果が、各類似業種毎10件程度集まったところで、逐次この欄に記入すべき数値を“製造業力”診断結果のデータに切り替えて行くことにする。
  また、データを切り替える以前に、“製造業力”診断を受診した各事業部署には、データー切り替え時点で、その時点での類似業種最高点と平均点を無条件で連絡するつもりだ。さらに将来的には、“製造業力”診断を受診した各事業部署にパスワードを持って貰い、弊社HPから日々変更が加えられる類似業種最高点と平均点を、ダウンロードできる仕組みの構築も弊社の構想にはある。

表2 製造業力診断における細項目採点基準
100点 ワールドワイドのビジネス競争でこの部分の力は、No1であり更なる強化が認められる
90点 〃No1クラスだが停滞感がある
〃No1クラスには未達だが、継続性を持った力の強化が認められる
80点 〃No1クラスだが、3年後5年後に向けての更なる成長性に疑問がある
〃トップクラスで、継続性を持った力の強化が認められる
70点 〃トップクラスだが停滞感がある
〃トップクラスには未達だが、継続性を持った力の強化が認められる
60点 〃トップクラスだが、3年後5年後に向けての更なる成長性に疑問がある
〃勝ち組に十分入れる実力があり、継続性を持った力の強化が認められる
50点 〃勝ち組に十分入れる実力があるが停滞感がある
〃勝ち組に十分入れる実力には未達だが、継続性を持った力の強化が認められる
40点 〃勝ち組に十分入れる実力があるが、3年後5年後に向けての更なる成長性に疑問がある
〃勝ち組負け組のボーダーライン上にあり、継続性を持った力の強化が認められる
30点 〃勝ち組負け組のボーダーライン上にあるが停滞感がある
〃勝ち組負け組のボーダーラインには未達だが、継続性を持った力の強化が認められる
20点 〃道具は揃ったが、手法取得活用など未だ不十分で力不足、力強化の取組が弱い
10点 〃道具は不完全、手法取得活用なども不完全で力がない、力強化への取組も未着手
0点 〃道具や手法取得など全く無頓着で力も全くない、力強化への取組の意識すらない



表3 診断細目評価における評価根拠記述例

9.診断結果分析・問題点抽出(強みの抽出も含む)

 この作業部分は、まさに弊社が持つノウハウの固まりの部分だ。よってこの段階で行う分析作業を詳しく説明できないのだが、そのあらましだけを簡単に触れておく。
  本診断におけるヒアリングは、商品開発の流れや業務の流れに沿い行うと説明した。そしてここでは、ヒアリング対象になった機種毎にその開発着手時点から、量産が安定する迄の過程に対して、ヒアリングで聞き出した様々な事象や発言を並べて行くところから、その作業が始まる。同様に、物作りなどのルーチンワーク部分は、仕事の流れや物の流れに沿った並べ方になる。
  余談だが、かつて弊社が“現状診断”を始めたころには、この段階での作業は、壁に貼り付けた複数枚の模造紙の上に、それぞれの事象や発言を記入した付箋紙を貼り付ける力仕事であった。現在は、カスタマイズしたスプレッドシート等を用いるため、複数のパソコン画面に向かえば済む作業になっている。ちなみに弊社コンサルタントの机上には、4台の液晶画面とキーボードが並び、これらを駆使しての分析作業となる。
  分析の準備作業が終わると、まず一連の、業務の流れの中で、様々な障害を起こしている部分に着目して、弊社独自の手法でその要因を追求する。その分析手法には、要因分析に似た手法が用いられるが、その内容は徹底的に論理性を追求した、全く異なる物である。
  一般にQCの分野などで用いられる要因分析は、ブレーンストーミングを中心に、当てずっぽうの(言いたい放題の)要因抽出が行われ、また当てずっぽう的に、最悪は何の根拠も追求されずじまいの多数決で、列記された要因が絞り込まれる非論理さがある。
  弊社のアプローチでは、前もって理詰めにあるべき姿を展開した上で、そのあるべき姿とヒアリング結果の差異を明確にし、差異を起こさざるを得なかった理由追求を理詰めで行うところにその特徴がある。
  さらに弊社が行う分析で最も特徴的なポイントは、本診断時点でのヒアリングが大きな役割を果たしている事である。実はこのヒアリング時点で、弊社コンサルタントの頭の中には、得られた数々の事象を基に、要因を追い込むための、ある程度幅広い範囲でのあるべき姿の展開表が作られている。その上で、被ヒアリング者に対してあらゆる角度からの質問攻めを行い、幅広く考えられる要因の可能性を消去法で絞り込む作業を既にこの時点から行っている。具体的なデータをこの段階で求めたり、数々の資料を要求するのもこのためだ。
  まさに医者(名医?)が、患者の病気を追い込んで行く際に、問診から始まり触診さらには体温、血圧、血液検査、レントゲンなどの検査データを駆使しながら、的確にその病名を探り当てる手法と同様なアプローチである。
  弊社が用いるこの手法で分析を行った結果は、過去行ってきた150件を優に超える診断先の殆どで高い評価を受けてきた。「さすがプロだ!」「こんなに見えていないところがあったか!」「7割方は、私もその通りだと認識していた、しかし残りの3割は私も気づいていなかった!なるほど・・・」など、これまで高い評価を受けてきた事を紹介しておく。
  尚参考までに補足しておくが、強みの抽出も問題点の抽出と基本的には同じ流れだ。あるべき姿に対して殆ど齟齬無く極めて円滑に仕事が流れていた場合には、何がこの“うまさ”を生んでいるのかの追求を行う事は言うまでもない。これまで多くのコンサルタントの手に掛かった診断分析で、往々にして蔑ろにされる“何故巧くいったのか”の追い込みもしっかり行うのが、弊社診断の特徴である。

10.“製造業力”評価

 8項のベンチマーク診断で列記された強み弱みに対して、9項の“診断結果分析・問題点抽出(強みの抽出も含む)”で洗い出された問題点と強みを加味した、企業力としての最終得点を採点する。この段階で自事業部署の“製造業力”を各自知ることが出来るようになる。尚加味のルールは、弊社独自のルールに則るが、その基準は公開しない。
  一般に8項のベンチマーク診断で現れる得点は、その診断時点での“製造業力”である。一方9項の“診断結果分析・問題点抽出(強みの抽出も含む)”では、その現時点の実力値が、三年後、五年後、十年後どの様に変わって行くかの予測値を引き出すことが出来る。
  例えば、発生している問題点が、企業文化という根の深いところに根元があり、おいそれとその文化を変えることが出来そうもないと判断される場合には、競合他社が成長して行くことを前提にすると、その項目は減点となる。
  一方、一寸した行き違いが、問題を引き起こしており、弊社の指摘を受け速やかにその問題点を解消できそうな場合には、その項目の評価点は大幅増点となる、と言う具合である。

11.21世紀を勝ち抜ける“製造業力”増強への事業改革案立案(概略実行計画含む)

 抽出した問題点を解決するために問題点に対して“何を行えば良いのか”の、改革案を立案する。その改革には、現時点で考えられる最も先端のあらゆる手法やツールの活用も踏まえた、“何をどの様に行えば良いのか”への追い込みを、弊社ノウハウを駆使して行う。そして此処でも、弊社がこの十数年来各所で行ってきた、“設計改革”“商品開発改革”“稼げる事業改革”を通じて会得した改革に対するノウハウが駆使される。
  この段階では、改革案の立案と共に、それを実行に移すためのロードマップの検討・策定も行う。内容的には、一般に製造業で行われる中期計画レベルの、方向性と進め方の骨子を示したレベルのものだ。改革に際して、その取り組の優先順位や段取りなどを、ヒアリング時点で把握した被診断事業部署の実力と、被診断事業部署が世の中におかれた状況とを鑑みながら立案する。
  尚、弊社が診断報告以降実際の改革の支援まで引き受ける際には、その改革着手時点で1〜6ヶ月を掛けて、それぞれの企業文化や人材で、本当に実現可能な計画に、弊社が提示したロードマップを基に詰め直して貰っている。
  弊社がこの時点で提示するロードマップは、被診断事業部署の実力を鑑みたとは言え、あるべき姿を下敷きにした、最も厳しい要求値と理解して貰いたい。このため、弊社提示のままで改革に突入しよう物なら、弊社から提示したロードマップは、単なる絵に描いた餅に陥る危険性があるので、注意が必要だ。

12.報告書作成、報告

 ファイル一冊に括られる診断報告書とは別に、要点をビジュアルに纏めた報告用スライド(パワーポイント)を一般には作成する。
  報告は、原則被診断事業部署に赴き、2時間余りの時間を用いて、弊社コンサルタントが行う。要求に応じて役員向け幹部マネージャー向け一般社員向けの3部構成で、発言内容を微妙に変えながらの複数回に分けての報告も、珍しいことではない。
  尚、提出する報告書は、報告会に参加できなくても、報告書を読めばその内容が全て解るように、少なくとも数十頁以上の文章で纏める。文章は、「設計の改革術シリーズ」や日刊工業新聞社の連載でおなじみの、読みやすく解りやすい文章表現で纏めてあるので、後で報告書を読むことも苦にならないはずである。

以上

診断費用・期間

 弊社が行う“製造業力”診断の費用・期間は、その診断の規模により大きく異なる。費やす日数は、診断の対象とする事業範囲やその彫り込みの深さで大きく異なってくる。
  一般に行う最短の診断で、アウトライン診断1日、本診断4日、報告1日で行った場合、旅費宿泊費などの諸費用や税金を除き、約750万円程度である。
  期間としては、アウトライン診断実施日から最終報告まで最短で一ヶ月、平均的には2ヶ月以上が必要だ。診断規模が大きくなればなるほど、その期間は長くなる。
  これら費用や期間については、予備打ち合わせに続く、見積もり提示時点で明確に提示する。